5e





はい、じゃあこれであかずきんはおしまい。そろそろ現実に帰る時間ですよー。お話の蝋燭を吹き消しまーす。この蝋燭ねー実はお願い事をしながら吹き消すと願いが叶うって言うんだ!じゃあ、一緒に…今月お誕生日の子いるかなー?手ェあげて!お!いるいるー。じゃあ、今月お誕生日のお友達はーみんな一緒に吹き消すよー。集まって集まってー。はい、そろったねー?お願い事を心の中で祈ってね!祈れたかなー?吹き消すよー。はい、せーのーでー!ふぅー!
登良の声に従って、集まった子どもたちが蝋燭を吹き消すと同時に電気がつく。みんなお帰りー。といいつつじゃあここからは、先生たちに変わるねーばいばーい。と登良は満面の笑みで手を振ると、子どもたちもつられて手を振り替えしてくれる。コミカルに、物語導入のための蝋燭も持ってきて成功したと登良は満足そうに笑う。
そんなもの5分前の話だったような気がする。子どもたちに気に入られて、登良も子どもに集まられた。んーと考えてから、ハンカチでお人形さん作ってみるー?と声かけてみると。子どもたちは花開くような笑顔で、つくってー!と声を上げるので、こうしてねー。と教え込む。一人ができるとじゃあ君が先生だね!と誉めてようやく子どもの波から解放される。

「登良ちんお疲れ〜。」
「疲れた、にーちゃん。」
「ほら、見てみろ。紅郎ちん、登良が言った通りに人気者になってるぞ。」
「仁兎先輩、登良くん。お疲れ様」

声をかけられて、ふとそちらをみると、あんずが笑って手を振っていた。登良くんすごい可愛かったよ!お話の蝋燭とか考えたの!?……いや、お兄ちゃ……兄貴に昔。火は危ないからって、懐中電灯でしたけどね。何時来られたんですか?
お兄ちゃん、といいかけて、ちょっと恥ずかしくて話を変えておく。人形劇の途中から来ました。園児たちが夢中になってたので私も混ざってたんです。大人気でしたね。赤ずきん。と言うと、あんずの顔が曇った気がした。

「紅郎ちんが演じた赤ずきんは大人気だったぞー。人形劇が大成功を納めたのも紅郎ちんがいたおかげだ!」
「あんず先輩がある程度下地を作ってくれてたので、大将もそれとなくできてましたし、あんず先輩が落ち込むことないんですよ?」
「でも、自分は何の役にも立たなかったし……」

眉を下げるあんずに、なずなは事故は仕方ないしパペット製作も手伝ってくれたから、何の役にたったと言うこともないよ。と言う。追加のパペットもあんずが作ったし、感謝してる。と言うと同時になずなが一瞬よろめいた。何だ何だと振り向くと子どもが狼さんですか?なんてなずなに言う。なずなはそうだぞーといいつつ、狼の口ぶりをするが、あんまり怖くないと言うので、なずなは苦笑い。それでもなずなの狼は愛嬌をもちつつ食べちゃうぞーと言うと、子どもは『怖ぁい』と逃げてった。そんな光景をあんずと一緒にみながら笑っていると、登良の服の裾が引っ張られた。下を向くと小さな女の子が登良を見上げていた。

「ねーねーお姉ちゃん遊んで!」
「おね……いいよ。なにする?」

一瞬ちょっとお姉ちゃん。と言われてちょっと怯んだが、それでも登良は笑って目線を合わせて問いかける。んーと。と悩みだしているので、じゃあねー。と遊びの提案をかける。と、女の子は大きく一つ頷いてくれる。その提案のためにじゃ移動しようかと園児の手をひいて遊びに誘うと、また一人一人ふえだして、捌ききれない子どもが登良と遊ぼう!と声をかけてくるので、暇になりかけている忍たちにも声をかけてみんなでおいかけっこを開始する。
最初に袖をひいた女の子は登良と一緒に手を繋いで子どもたちを追いかける。

「ね、俺の背中に乗って!あの狩人のお兄ちゃんを止めに行こうか!」
「登良殿!目が本気でござるよ!!」
「何の事だろうね?お兄ちゃんわかんないや!」
「登良殿!だから目が座ってるでござる!」

俺たちおいかけっこしてるだけだもんねー。と女の子ときゃあきゃあやってると、はやーい!おれもおれも!と子どもたちが登ってくるので、くそ兄貴つれてきたらよかったと後悔しながらあっちのお兄ちゃんもはやいぞー!かかれー!と子どもたちを見事に動かすのであった。そんな後ろで、登良の対応を子ども番組の参考にすると言う紅郎の姿が見られたとか見られなかったとか。ふらふらになってなずなのもとに帰る頃、満身創痍の登良が居たとか居なかったとか。

「登良、」
「はい、大将、」
「お前の言った通りだった。あんがとな。でも、よくわかったな。あんなこと」
「兄貴と『流星隊』の隊長ならどう動くか考えただけです。」
「あいつら、ガキと一緒って言うのか!」

はい。と笑って見せると、お前それ本人の前でいうなよ。と紅郎が登良に念を押すのだった。登良は一瞬ニヤリと笑って頷くのだった。



[*前] | Back | [次#]




×