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忍に連絡をいれると、一緒に放送室に行こう。と言われたので、登良は二つ返事で快諾した。二人で放送室に入ると誰もいなくて、登良は不思議そうにまわりを見回した。知らない機材があったりするので、これはなにあれは?と問答を繰り返していると、なずなが部屋に入ってきた。

「しのぶんいるか〜。」
「あ、委員長殿!それに鬼龍殿も!こんにちはでござる。」
「にーちゃん、大将お疲れ様です。」
「二人ともちゃんと挨拶できて偉いぞ〜。紅郎ちんを連れてくるときに事前に伝えておいたけど改めて説明するな。」

紅郎ちんと登良ちんには俺たちが出演する人形劇のパペットを作ってもらうことになった。おれも紅郎ちんと登良ちんに教わりつつパペットを作るからその間はしのぶんひとりで練習することになる。まぁ、台本を読んでもらっててもいいしな。今回しのぶんは狩人とおばあさんの二役で大変だと思うけど、おれも協力するし、登良ちんも頼ってって言ってたからな。うんうんと頷いていると、紅郎がなずなに何の役をやるんだと声をかける。残りは狼しかねえぞと。言うが、なずなは狼をやるつもりでいるらしい。

「まったく怖くねえしむしろ微笑ましいよ。しかし仁兎が狼とはな、「Ra*bits」は『かわいい』を売りにしてるんだろ?狼なんてかわいいとは正反対だろうがよ。」
「それはそうだけど、おれもたまにはイメージと違うこともやってみたいなって。ほら、レオちんに誘われて『ナイトキラーズ』を組んだだろ。ああいう感じ〜。」

おいおい癖になったわけじゃねえよな。と紅郎が言って、登良の脳裏にはなずなの脱退。という文字が浮かんだ。それはまずい、一年生ばかりのユニットでやっていける気がしない。むしろあの面々の舵きりを誰がやるんだ。と登良は一瞬で様々なことを考えた。書類仕事だってなずなに聞かなければわからないことはまだまだたくさんある。どうしよう。と顔に出るほど動揺した。

「登良殿顔色が悪いようでござるが。」
「に〜ちゃん、辞めちゃう?」
「また考えすぎてたのか!?安心しろよ登良ちん!たまには、だからまだまだお前らを捨てるわけにはいかないよ。」
「悪い、登良。俺が要らないことを言い過ぎた。」
「だ、大丈夫です。あのメンバーの舵きり大変そうだな、って考えてたところで止まりました。」
「ほぼほぼ抜ける前提で考えてるじゃねえか。」

ははは。と乾いた笑いを浮かべると、考えすぎなのは登良ちんの良いところであり悪いところだなと言われて、そうですよね。と返事をしておく。よかったと胸をなで下ろす。やれやれと首を降りつつ、忍にも大丈夫だと告げると、考えすぎるのもよくないでござるよ!といわれるので、登良はうんうんと頷いて、パペットの完成予想図をかりかりとかきあげるためにシャーペンを握る。

「委員長殿、そういうえば登良殿と鬼龍殿には声をかけたでござるか?」
「そうだ、紅郎ちんと登良ちんがいたな〜。」
「おいおい、自然な流れっぽく俺と登良を巻き込もうとすんなよ。」
「駄目か、登良ちんも紅郎ちんもパペット製作に加えて人形劇まで手伝ってもらうのは心苦しいけど。俺、二人の手を煩わせないよう頑張ってパペットをつくるから。」
「男が簡単に頭を下げるもんじゃねえぞ。俺だって手伝えるなら手伝ってやりてぇけどよ。」

演技は苦手だし、よりによって『赤ずきん』だろ?俺には似合わねえよ登良のほうが適任だろ。と振られるが、俺……遊木先輩の赤ずきんがみたいから最終的に決まらないなら……、それまではやるならナレーターやりたいな。と小さくこぼしながら考える。確かに鬼龍殿は赤ずきんより狼のほうが似合いそうでござるな〜、委員長殿と役をチェンジするのはどうでござるか?それなら登良殿もナレーターになれるし、問題も全部解決するでござる!

「まぁ、妥当な配役だよな。この状況で狼をやりたいなんてワガママは言ってられないし。登良ちんも紅郎ちんも劇を手伝ってくれるなら俺は赤ずきんを演じるよ。」

うんうん。となずなが頷くのを見て、登良はラフスケッチの図に戻るように視線を手元の紙に戻すのだった。



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