俺と『Diana』と転校生2。 





活動費を使うのは久しぶりだった。
昨年はそんなに学校にいないこともたくさんあったから、さまざまなイベントを見送ってきたが、今年は違う。どんだけあがいても夢ノ咲には今年までしかいられない。仲間が残してった活動費は、お前が臨時メンバー集めるのに使えと託されたが、そんなに使う気にならなかった。あいつらがいての『Diana』だし、使えるか。と置いておいたが、使う道ははなから決めてたので、それ以外の費用がどうしても入り要だったから、寸暇を惜しんで校内バイトの振り付けして貯めて、今日まるっと1日借りることが出来た。それでも小さなレッスン室だからかしてか比較的不人気の部屋だったから他のレッスン室の値段と比べたら破格だ。電気をつけて、シャカシャカ鳴らしていたら様子を見に来ると言っていた我らが『プロデューサー』あんずが入室してきた。

「先輩!」
「あんず!」

もうはじめますか?おう柔軟がてらに二三曲やるから見といて。そのあとアドバイスちょーだーい。わかりました。
了承の返事を聞いて部屋で音量鳴らす。『Diana』のユニットソングのロックアレンジが聞こえてきた。音に身を任せ身体中を使って俺を見ろとばかりのパフォーマンスをする。ドラムの音に合わせて靴をならし装飾音符も鳴らす。躍りが楽しいと笑顔がこぼれる。間奏に入るので俺は高速技を入れて、高く飛んで着地音と同時に一瞬の静寂。そしてまた音がなる。ラストのサビに入って、タップを控えめにして、指先まで緊張感で揺るがぬようにのばす。
そうして柔軟として三曲を踊る。
あんずが気をきかせて、スピーカーの命を断つ。柔軟とかいいつつ、真剣に踊りすぎて三曲まだなのに汗が止まらない。

「やっぱり先輩ってすごいですよね」
「あぢー。んだろ。んだろ?」

シャツのえりぐちをパタパタしながら涼しさを求めて腰を下ろす。『Diana』一人でこうなのに!メンバー全員いたらすごくなりそうですね。

「全員三毛縞と守沢を足したような奴だからな。」
「それは……」
「おい、今絶対に二人の悪いところばっかり連想しただろ」

ヒーローショーとざっくりアメリカティブ的なの足して2で割んな。そんなの五人居ても…守沢は喜びそうだけどさ、ちげぇよ。ケラケラ笑って片足を立ててそこに肘ついて頭を乗せる。ふと思い出した姿はもう帰れない場所だ。

「明星たちを見てたら思うよ。いつかの俺たちが被って見えるから、お前が見守ってやってくれよ。」
「先輩?」
「俺、このあと時間まで振りやらいろいろ仕上げとくよ。ほらほらこっから先は企業秘密だから、また企画書持ってそっち行くよ。明星たちのレッスンの時間だろ?」

ここからはそんなに何もしないから見ててもおもんねぇし、ネタバレするつもりねぇし、あんず作業残ってるんだろ。ほらほらいっといで。ひらひら手を振ってあんずの退室を促す。忘れていた傷がほんの少し顔を出して、どこか俺を嘲笑ってる気がした。どんだけ羨んでも過去なんて戻れないのにな。ぱたんとドアが閉まってから俺は部屋を見回してやりたいことの下準備一人で踊っても問題ない曲を片っ端から躍り探し出すことにしよう。




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