049 そんなときの荷物を詰めて、林間合宿当日。 バスに揺られるとどうも酔いやすい私は、前に座れと言われて相澤の横に席を決められる。バスの座席に身を投げて襲い掛かるであろう酔いに備える。周りが煩いのはしかたないので、窓の外を見ながら、時間を飛ばすために眠気を待つ。景色が流れるのを見ながら、終業式あたりを思い浮かべる。 敵の動きを警戒して、例年使わせていただいてる合宿先を急遽キャンセル。行き先は当日まで明かさない、ミステリー林間合宿になると終業式の日に言われたのを思い出しながら母に伝えるとあそこ過ごしやすいのにねー。とぼやく母は、妙に昔を懐かしんでいるようだったのを思い出す。 「沖方、俺の服にもう吐くなよ」 「吐きません。」 期末試験の最後に、脳が回って気持ち悪くなって相澤の服に吐き出したのを言ってるのだろう。寝ます。と切って一時間後にトイレ休憩でとまるから、そこまでは持たせよ。といわれるので、薬を乗る前にのんだから一時間ぐらいなら何とかなるだろう。と思いつつ、1時間後にアラームをかけて眠りにつく。どうせ、この相澤が考えてるんだから、きっとろくなことはないのだろう。ならば、寝ておくのがいい。 後がにぎやかになるのを相澤も止めるのをやめたのだろう。ドン引いた顔をしてこっちを見ている。よくこんな煩いなかで寝れるな。というのを聞きながら、ぼんやりとして景色が流れるのを見て、体力の回復に努める。昨日も寝すぎたので、そんなに眠くならなかったが、だんだんと街中を外れて山のほうに向かっていくのはよく解った。強化合宿っていうんだから、おそらくは”個性”の強化。ひたすら重たいものを飛ばすのとかやだなぁ。周りがおやつを食べたりわいわいしてるのを聞きながら、わかいっていいなぁ。なんて思う。現実逃避をしていると、一時間なんてあっという間だった。 「付いたぞ、全員降りろ。」 「んぬぅ…?」 揺さぶられて目をさまし、うとうとしながら透ちゃんに手を引かれてバスを降りる。佳英ちゃんだいじょうぶ?と言うので、コックリコックリ返事をしていると、近くでボスッと殴る音を聞いた。緑谷が誰かに殴られ…誰だ?いま、完全に寝てて聞いてなかった。 「…あ…なんで。こんなところにプロヒーローがいるの?」 「あんたらの宿泊施設はあの山のふもとね!」 そんな言葉で周りがざわつく。やばい、今までの雄英で培った予感がそう告げる。ましてやこの行動が相澤だ、いいことなんかあるはずがない。何が起きる?身構えると同時に、どこかで唸りが聞こえ、相澤をとっちめるために相澤を探す。 「今の時間は早ければ12時前後かしらん。12時半までにたどりつけなかったキティはお昼抜きね!」 「わるいね諸君。合宿はもう始まっている」 そんな言葉と共に地面が沸いて盛り上がり、私たち生徒全員を巻き込んで崖の下へと落ちる。 私有地につき”個性”の仕様は自由だよ!今から三時間!自分の足で施設までおいでませ!この”魔獣の森”を抜けて!! 女の声が聞こえて、空に放り出される。まって、足場!!足場!! フリーダイブを経験し、一緒に流れてきた砂を使ってクッションを作って身の安全を確保する。上から一緒に落ちてくる土砂も横に置いて、一息吐いて周りに声をかけてみる。返事はない。 周りに誰もいない静かな土の見える環境。相澤が合宿が始まっているとのたうってるんだから、これはもう行くしかない。一人でも、だ。木を登り方向を定める。あのプロヒーローが三時間というならばもっとかかるのかもしれないが、昼を抜くのは嫌だ。腹が減ったら動けないじゃん。 「…直線まっすぐ!」 なにが出ようとも、私はまっすぐ行くのだ。 ←/back/→ ×
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