■ あなたをすきだと言いたいのに

飛空挺師団赤き翼を束ねているのは昔からの知り合いであった。どうして過去形であるかとここで記すならば、その知り合いは先程任を解かれたからである。そう、目の前にいるのは親友で、暗黒騎士である。
仕事を済ませて私の部屋に帰ってきたら、件の親友が私の部屋の前で待っていたのだ。

「セシル?」
「メロウ。」

夜の青でも空の青でもない独特の青は、彼と違う青で、やはり彼の青は綺麗だな。と考えてしまう私はまだまだ、彼への未練が捨てきれてない証拠でありました。ただ沈黙が降りてから、セシルに冷えたでしょう?お茶を入れましょう。と背中を押すように彼を部屋に招きました。
幼い頃からセシルは私の部屋によく来ていました。姉のような存在で親友の私にしかしない話もあるようで、そう言うときは決まって彼に迷いがあるからで、私は彼の話を聞いて迷いを誘導して迷う道を潰していってセシルが自分で決めるのですが、どうやら今日は少し違ったようで、穏やかな表情の中に険しさも僅かながらに残っている様子でした。お茶の支度をしつつ、ポットの中にブリザドで作った氷と炎を共に閉じ込めて、セシルに席を勧めました。先程と変わらない表情で、椅子に座るのを見てから、私はセシルの、向かいに腰を落ち着け二つのカップにお茶をいれ、ひとつをセシルに手渡して、口を開くのを待つのです。

「ねえ。メロウ。」
「はい。どうしました?」
「最近陛下が…。」

それ以上を言わさないために、私は自分の唇に指を当てました。黙りなさい、というジェスチャーも伝わったようで、セシルの眉間に皺が寄りました。

「恐らく、セシルの、考えてることで正解でしょう。私から言うことは命じられてるので多くは有りません。ただ、あなた達の旅支度としていく、か持っていってくださいな。」

冷たい風を閉じ込めた道具を三つほどセシルに渡せば、ありがとう。といいつつ受けとる気配はない。横に置いてから、形のよい瞳が鋭く光る。
その視線から目をそらしたままにしていると、セシルは、そのまま、言葉を続けました。

「メロウは、あの陛下を見てなにも思わないのかい?」

それは、私からは言えません。言うことは禁じられてます。
言えば、あなたたちまで巻き込んで断罪されるでしょうから。と心の底にしまいこんで、目を伏せる。

「セシルは、私の口からなにを聞かれたいのですか?」
「陛下は変わられた。」
「陛下を非難するのですか?」
「違う!」
「いいえ、違いませんよ。」

陛下を非難することは、バロンを否定すること。即ち、陛下を疑うと言っているようなものです。そう、セシルが考えているのでしたら、すぐに考えを改めたほうが宜しいかもしれません。そうかんがえているから任を解かれたのではないのですか?
そう問いかければ、セシルは、メロウも変わったね。と悲しそうな顔でこちらを見ていました。恐らく私も同じ表情をしてるかと思います。苦しくて切なくてもどかしいなんとも伝えがたいそれは、恐らく私もセシルも同じ想いを抱いてるのに、真逆の方向に進もうとしているのです。

「いつも、わかってくれていたのに。」
「私は否定はしていませんし、肯定もしておりません。解ってください。」

私から言える精一杯の、メッセージをこめて。今は嫌われても仕方ない。バロンがきっともとに戻れば、今の王が居なくなれば。きっと。また、みんな元に戻れば、わかり会えるだろう。彼らは。
三人で微笑み合うなかに私はいれるのだろうかと、考えてみたがそんな、図か想像できなかった。視線を落としたままにしていると、セシルは夜遅くなってきたから僕も帰るね。メロウ、ローザを任せたよ。そう一言のこして、セシルは脇においた道具を持って席をたつ。私は玄関先まで見送って、角を曲がるまでその背中を見送りながら小さく呟きました。

「あなたをすきと言いたいのに。」

もう、言えないようになってしまったね。
後戻りもできない細い道に立たされている気がして、いましたが。
これが、私メロウとセシルの、最後の話し合いだったのでした。

オセロ
あなたをすきだと言いたいのに

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