■ つくりものの表情、いつわりの感情

久々のお休みがローザと、揃ったから二人でお茶をすることになりました。人見知りの私は、年下の彼女の後ろにいることが多く、共にいることは沢山の貴族からは指を指されることもありましたが、近衛兵の上部にいた父のお陰でか武芸の心得を持ち、凄腕の魔導師である母のお陰でか簡単な白魔法も黒魔法も使えるようになり、魔法に関してはローザと同格かそれ以上の腕を持ちながらも、武官にもならないと言われましたが、私の性格上争うことを嫌うがゆえに、今の道を歩くようになったのです。

「ね、メロウ。カインはどうなの?」

あなた、この間カインに嫌いだなんて、なにがあったの?真剣そうなローザの目から逃げるように視線を外しました。じとじとする視線が刺さっているのはわかりますがその視線を無視してお茶を飲みます。この間のやりとりを思い出して、胸が酷く痛みお茶の味すら分かりにくくなりました。

「何日か前に言いたいことは言ってきました。」
「えぇ!?」

もしかして、あの日かしら?ときゃあきゃあはしゃぐローザは色々考えている様子ですが、その想像とはまったく逆の結果を言っただなんて誰が信じたのでしょうか。
私ですら、信じられないのですから。
キラキラした瞳をこちらにむけて、私に顔を寄せて続きを促してくるのです。

「それで、カインは?」
「さぁ。なにも聞かず私は飛び出してきたので。」

知らない。と告げると、ローザは酷く残念そうな表情を浮かべていますが、まぁ、嫌いと申し上げたのですから結果なんて直ぐに思い浮かびますし、それに彼は…。

「大丈夫よ、メロウ。メロウとカインなら問題ないわよ」

彼は目の前の彼女に好意を抱いてるのですから、私になんて、あの優しい笑みを向けることは有るわけないのです。あっても、私とローザのやりとりを睦まじく見ている彼の瞳にはどうにもローザがほとんどを占めてるのですから。
そう、だから、私は彼をひたすらに嫌いと自分に言い聞かすのです。

「さぁ。解りませんがね。」
「そういえば、この間カインがね。」

キラキラ砂糖菓子のように甘い笑顔を向けてくれる彼女に、相槌を打ちながら、全く味のしないお茶を飲み込んで、話を聞き流す作業をたんたんと繰り返すのです。笑顔の彼女がふと思い出したように、話題を変えていくのです。

「こんど、セシルがミシディアに行くらしいわね。」
「…そうなの?」
「メロウも行くんじゃないの?陛下の側仕えなんですから。」

脳裏に浮かんだのは、おぞましい表情をした陛下のお顔でした。狂気の中にある殺気は、背筋をそっと撫でていくあの感覚はたまにふと背中をかけていくのです。有無を言わせぬ狂気の沙汰に誰にも言うことは出来ないことを思い出して、私は何事もないようにローザの話を聞くのです。
すべてに嘘をつきながら、真逆のことを言い聞かせていくのです。表情をつくり、違和感の無いように私は…私を変えていくのです。
お茶会を済ませて、ローザの家を出ると太陽は山の向こうに消え行きかけていて、ぼんやりと、私はその、空を見上げながら帰路に着くのです。

オセロ
つくりものの表情、いつわりの感情

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