■ はじめから分かってた、これは叶わぬ恋だって

私は知っていたのです。
私の抱いてるのは叶わぬ恋いうのが。
私は知っていたのです。
その彼も叶えれぬ恋をしているのを。
私は知っているのです。
私はもうすぐこの世界から消えて無くなるのです。

彼との始まりは、バロン城の渡り廊下で。
近衛兵である父と彼の父とは親友で、お互いに我が子を連れ歩いていたがすべての始まりでした。
なにがあったのか解りませんが、始めて会ったとき彼は酷くふて腐れて彼の父に宥められながら、城の庭で遊んでおいでと背を押されたのでした。
道中話を聞くと彼はどうやら始めての登城だったようで、城の庭の絶景が気に入ったようで機嫌を治し、私と遊ぶのでした。そう、これが彼と始めての出会いです。
それから、遊ぶうちに王の子セシルと知り合い、白魔導師の家の娘ローザと仲良くなって、気づけば四人で一つの塊として動くことになっていたのです。友として親友として、ともに鍛練しセシルと彼は騎士に、ローザは癒士として、私は道を迷いつつも自分の取り柄である鼻のよさを生かさして陛下の側仕えとして、進路を選んだのです。
時に喧嘩や互い違いや様々なこともありましたが、それでも私たちは日々成長していきました。
かくして、みんな、バロンの民として育ち行くなかで私は気づいてしまったのです。
彼とセシルはローザを好いていることに。
そして、私は彼に恋心を抱いていたことに。
会うたびに、話すたびに私は天にも舞うような気持ちになるのと比例して、私というのが終わりにと駆け足になっていくのです。幼い頃はよく呼び捨てにもしてはいましたが、それももう恥ずかしく今では呼ぶことも叶いません。ですから、どうかこの手記だけは彼と書くのをお許しください。私の手記が、どこに影響があるか解らないのですから。
だからこそ、この気持ちは私の胸に秘め、これにただただ綴るのです。
気づいたときには遅すぎて、私は言い聞かすしかないのです。
だからこそ、これを読むあなたに、あなたにだけは。

誰にも語られないかもしれない歴史を、これを読むあなたにだけは、知ってほしかったのです。
私の気持ちを、彼を思う気持ちを。
そして彼に伝えてください。
私が彼を好いていたことを。
彼はこの世界に絶望しないでと。
世界はあなたを嫌ってないと。

恐らくこれを誰かが読む頃には私はいないのですから。
もしかすると、私は処刑されていないのですから。
このバロンは狂いだしてきているのです。
これを読むあなたは、気を付けてください。
バロン王は、既に…。

オセロ
はじめから分かってた、これは叶わぬ恋だって


[ prev / next ]
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -