ウイスキーの味はまだ知らない

☆赤井さんと夢主の組織時代の話。夢主はライを知ってはいるがライ=赤井とは知らない。

------------------------------------------------------

「レディキラー、仕事だ。出ろ」

白衣を着た男達がリラに冷たく言い放った。膝に顔を押し付け、蹲っていた少女はゆっくりと顔を上げる。
どこまでも黒く暗い瞳は部屋の外からの光さえも飲み込み、男達の姿を映しているかも定かではなかった。

『……了解』

ゆったりと立ち上がり、フラフラとしながら部屋の外へ出る。リラは先日の新薬実験の副作用で体調不良を起こし、色白な肌を青白くさせていた。
一般的な人間であれば少女が体調不良であることは一目瞭然で、気遣いのひとつでもするものだが……組織の人間がそんな優しさの欠片を彼女に与えることはない。

『(早く終わらせて……明美と志保の所に行きたい……)』

朦朧とする意識の中、優しい2人の姉妹を思い出す。リラの拠り所であり、彼女が心を開ける人達。
……その思い出に浸る時間さえ白衣の男達は彼女から奪う。

「何をしているレディキラー!早く行くぞ」
『っ……』

リラは男に腕を力強く掴まれた。ギリギリと指がくい込み、骨が軋む。
いよいよ意識が飛んでいくかと思った瞬間、ふわりと、煙草の匂いがリラの鼻をかすめた。

『(……誰?……あったかい……)』
「感心せんな。一人の女によってたかって怒鳴ることしか出来ないのか」
「ら、ライ様!いえ、しかし、実験が……」

長い黒髪にニット帽を被った黒づくめの男、ライがリラを腕の中に収めてそう言った。科学者たちは突然の幹部の登場に驚き狼狽えている。
リラは腕の暖かさを感じながら、その意識を手放した。

------------------------------------------------------

科学者を言いくるめ、レディキラーを引き取り横抱きにして、ライは廊下を歩く。
腕の中の少女は、寝息を立てていなければ生きているか心配になるほど顔色が悪かった。

「(こんな少女が組織の兵器とは……早急にどうにかしなければならんな)」

ライは思案しながら、明美の元へ向かう。恋人に会いたい、ではなく、レディキラーの様子を診せるためだ。
そうして宮野姉妹にレディキラーを預けたライは、組織を壊滅させることを考える片隅で、レディキラーのことを留めるようになった。

リラがウィスキーの味を知るのは、未来の話


[ 3/3 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -