傷跡が私をさらっていく

※kalafinaの「傷跡」という曲をモチーフに書きました。とても素敵な曲なので是非聞いてみてください(宣伝)
※13話と14話の間の話

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静けさが支配する部屋の中で、リラはずっと泣いていた。ジンの言葉が胸に突き刺さってジクジクと痛む。ジンの射抜くような瞳が、頭から離れない。

『(涙が止まらない…なんでこんなに胸が苦しいんだろ…)』

膝に顔を押し付けて泣く。リラは今までも度々泣くことがあったが、それを誰にも見られないように顔を膝に隠して泣いていた…ここでは誰も助けてくれないからだ。

『(あぁ…でもジンは、助けてくれたのかもしれない)』

明美と志保以外に、初めて私をリラにしてくれた人。私がつらい時、逃げ出したい時、私を抱きしめて守ってくれた人。
明美を殺して志保まで殺そうとしてる人なのに、頭から、胸からジンが消えない。


『まるで、傷跡みたいだなぁ…痛くて、消えない…でもこの傷跡はポカポカする…』


リラは胸に手を当てて、ジンのことを思った。ひどい人だけど、約束を違えた人だけれど…それでも私に優しくしてくれた人。
苦しくて、暖かい。きっと、これが。

『これが、生きるってことなのかな…』


この胸の痛みは、生きることに貫かれた痛みなのだろうか。リラはそう思うとなんだかおかしくなった。

『ふふ…嫌いになったと思ったけど、明美と志保と同じくらいまだ好きなんだなぁ…変なの』

リラは床に寝そべり、目を閉じた。冷たい夜を越えるために。
…その感情が、傷跡が、恋であることをリラはまだ知らない。


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