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 パシンッと音をたててジルはカグラの手を払い落とした。ジルは何故そんな行動をとってしまったのか自分でもわからなかった。思い通りに事が進みそうになかったからか、またそれ以外に理由があるのか、ただ無性に頭に血が上って、自分が買われている存在だということを忘れてしまっていたのだった。

「・・帰れば。どうせもう合わないんだろ、お兄様とか胸糞悪い呼ばせ方させやがって・・、客じゃないならもう関係ないよな。さよならユラさん」

 そう一気に言うとジルはシャワー室に走り込んだ。
 部屋に残されたカグラは少し呆然として固まっていたが、手で顔を覆いながらくくくっと笑った。

「・・成る程ね。お綺麗な天使様だからといって、性格までそうというわけではなかったということか・・、なんだか一杯食わされた気分だな」

 そう呟くとカグラは上着をひっかけて部屋を後にしたのだった。
 その上着のポケットには薔薇を象った銀のバッジがはいっていた。それは軍の少佐クラス以上の者にのみ持つ事が許される証である。
 ジルの勘はあながち間違ってはいなかったのだ。この男娼にいれば軍の上層部の情報も手に入るかもしれないという当初の目的は。



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