強者こそが総て

 ジルは帝軍の入学式の会場内にいた。落ち着いた華美過ぎないホールは、いくら金持ち学校と言っても、軍によって管理されている軍人育成学校であることを物語っていた。
 半強制的に入寮が義務付けられている帝軍では、二つの男子寮と一つの女子寮の三つの寮があった。この入学式の後、生徒達は自分の寮へ行き、そこで初めて部屋割が解ることになっている。
 寮のシステムとしては二人一部屋型のいたってシンプルなものである。

 ジルは一般の新入生がいる観客スペースではなく、裏手の場所で簡単な進行を聞く予定になっていた。

「ええっとジル・カグラ?てのは君かな?」

「・・・はい?そうですけど」

 ジルにそう問いてきたのは、赤茶のくせっ毛とシルバーフレームの眼鏡が眼を引く細身ですらりとした生徒であった。胸に付けられた薔薇を象った徽章が二つある事から、一つ上の学年である事が伺えた。
 帝軍では、この薔薇の徽章の数で学年が解るようになっているのだ。
 ジル自身も受け付けで、胸に付けるようにと薔薇の徽章を一つ渡された。この先輩は、それ以外にも十字のような徽章を付けていたが、まだ受け付けとこの会場にしか入っていないジルにはそれが何を意味するのかわかるはずもなかった。

「合っててよかった!それじゃあ君が今年の"GloriousKnight"の一人だね」

 にこにこと笑みを浮かべながらそう言った先輩は、ジルを裏手の別室へと誘導した。
 ジルの中で、先輩の言った、"一人"という言葉が頭に引っ掛かっていた。

 室内に入ると先程までにこにこと笑みを浮かべて頼りなさそうに感じていた先輩が、背筋をピンと伸ばし、室内にいた生徒に向かって敬礼をした。

「第二学年。ルイス・ルベリエ伍長。ジル・カグラを連れて参りました」

 ジルは先輩、つまりルイスの豹変ぶりに一瞬眼を見張ったが、ここが何の学校だったかという事を再確認させられたのであった。

「ご苦労だったなルイス。ところで・・・、俺は確か二人連れて来いと言ったはずだが?」

 室内にはジルとルイス以外に、今ルイスに話しかけた黒眼黒髪のがっしりとした男、そして少し長めの銀髪を一つに結んでいる青眼の青年とクリーム色の髪に茶眼の双子と思われる男女がいた。

「・・・っ申し訳ありません!まだ裏手には来ていないのか、見つけれたのは彼だけでして・・」

 ルイスは顔を青くしながら所載を話した。

「ルイス君。駄目だよ」

「そうだよ。少尉は二人って言ってたもん」

「・・・あのな・・、というかなんでお前等二人はここにいて、同じ学年の私だけ使いっぱしりなんだよっ」

 ルイスを責めたのは、クリーム色のふわふわした髪を揺らしている双子の男女だった。女の方が髪を二つに結っている事を除けば、見間違えそうなほど似ていた。二人ともあまり表情が動いていないのも、そう感じた要因かもしれない。

「だってねえ」

「私達軍曹だしね、ルイス君より階級上だから」

 それを言われるとルイスは何も言えなくなった。そして、「もう一名探して参ります」と言ってジルを室内に置き去りにして去っていったのだった。



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