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 ジルは受け付けを終え、自分の試験会場に向かっていた折、厄介な輩によって道を塞がれてしまっていた。

「なあなあお嬢さん。せっかくの美人さんなのに男装なんてしちゃって勿体なくねえ」

「そうそう。軍人なんて男がなってりゃいいの。女に学はいらねえっての」

 所詮財力のある商家のどら息子等と言ったところか、どうせ受かるはずもないなら、適当に邪魔をして遊んで行こうという腹なのだろうと、ジルは内心冷めた眼をして冷静にそんなことを思っていた。
 そして同時に完璧に女と間違われているという事実に、はらわた煮え繰り返るような怒りを感じていた。

 ジルは学だけでなく、その容姿のこともあってか、武道に関してもその辺の輩には負けない自身があった。もちろんこんなところで騒ぎを起こすのは得策ではないと思う一方で、こいつらをどうにかしなくては試験に遅れてしまうという最悪の未来が見え隠れしていた。

 こういう輩は口で言っても仕方ないと、ジルは握りこぶしに力を入れた。

 だが、その手が振り上げられることはなかった。


「あっれえ。何々、か弱い女の子を不細工男がよってたかって何してんの?あ、もしかしてこんなとこでナンパとか?まじお前等一遍鏡で自分の面確認してきたらいいと思うよ」

 突然現れた一人の青年によって、ジルの握りこぶしはやんわりとその大きな手で抑えられた。

「・・・っ!!お前誰だよ突然現れて失礼な事ばっかり言いやがって」

 そんなごろつきの言葉を聞いて、その青年は「ハハハッ」と軽快に笑った。

「だって事実だしね。お前等とこの子じゃ似合わないよ」

 そう言ってちらりと横目でジルを捕えた。
 ジルは青年の薄い茶色の瞳に、一瞬吸い込まれそうになった。

 青年の容姿は麗人という言葉が似合いそうな装いだった。
 茶色の柔らかそうな少し長い髪を後ろでさらりと紐で結び、すっとしたまだ少年さを少し残したあどけない表情は、明るいその口調を表していた。

「さてさてお嬢さん。こんな奴らほっといて、私と来て下さいますか?」

 完全にごろつきの少年達を無視し、ジルの方に向き直った青年は、笑顔を向けた。

 そしてジルは、直感的になぜか見ず知らずのその青年の言葉に頷いていた。

 すると青年はジルの身体をヒョイッと持ち上げ、所詮お姫様抱っことやらで、呆気にとられている少年達の前から安々と姿を消したのであった。



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