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「なるほどね。合点がいったわ。だけどユラ、あなたが子供を何ていったいどういった心境の変化なのかしら。それに心配だわ、ジル君だったかしら、こんな人として危険な人物が親で良いの本当に」

 さすがのルイーダはバルトルと違い、カグラが男娼館通いをしていたことを知らなかったので、元来ジルがどうして養子となったのかという所には気付いていなかった。

「ちょっと本当何なのかな、ジゼルさんといい君といい、私のことを確実に何か勘違いしているよ」

「ユラ、あなたには聞いていないわ。それに、十人に聞いたら十人全員私と同じように言うと思うわよ」

 カグラは自分が確かに普段飄々と周りに対応していることや、多少自分勝手に立ち回っていることに自覚はあったが、性格に一番の原因があったということには気付いていなかった。

「ユラさん。大丈夫だよ、確かに少しは問題があるかもしれないけど、俺はユラさん結構好きだし、良い人だと思ってる」

 そう言ってフォローの言葉をジルは投げかけた。

「うんうん。やっぱりジル君は見る眼あるよ。まあ少し気になる部分もあったけど」

 ルイーダは思った以上に二人の関係が良好そうな様子に内心ほっとしていた。なんだかんだと言いつつも彼女もまたバルトルと同じようにカグラの旧友であるのだ。口ではジルの心配をしつつも、カグラの事も心配していた。もちろんそんな事を口に出すことは出来ないが。

「ジル君。今更だけれど、私はジゼルの妻のルイーダ・ギルベルトよ。よろしくね。」

「・・・!よろしくお願いします」

 ジルは微笑んだルイーダの美しさに驚きつつも、つられて自分も笑みを浮かべていた。それは作り物などではない自然と生まれたもの。ジルの笑顔は本当に綺麗だった。ルイーダさえも見惚れるほどに。

「ああ、本当に残念だわ。こんな可愛い子をユラの手元に置いておくだなんて・・・。少しでもあの変態に何かされたらすぐにお姉さんに言うのよ。それに私の事母親代わりに思ってくれていいのよ」

 ジルはルイーダに最初感じていた威圧感を今は感じなくなっていた。そして今日知り合ったバルトルとルイーダという二人のカグラの友人に対して少なからず好感を抱いたのだった。


 騒がしい時間が過ぎ、バルトルはルイーダに連れられて屋敷を後にした。普段の静寂が訪れた屋敷で、ジルはぽつりと零した。

「ユラさんは友人に恵まれてて羨ましいや・・」

 それは縋る者を亡くし独り虚勢を張って生きてきたジルだからこそ感じた友人という繋がりに対する羨望であった。

「・・・大丈夫。ジル君だって学校に通い始めれば沢山の人と知り合える。そうすれば気の合う子がきっとできるはずだよ」

 カグラ自身何だかかんだと言いつつもバルトルやルイーダを本当に大切な掛け替えのない友であると感じていた。そして、そんな二人に出会えた学びやにジルを通わせたいと思っていたのだった。

「・・本当!じゃあ俺もっと頑張って勉強するよ。三人が学んだ学校で俺もそんな友人を作りたいや」

 そんな子供らしい無邪気なジルを見て、穏やかな表情をしていることにカグラは気付いていなかった。

「でもそうなると私はその友人に嫉妬してしまうな・・ふふっ・・」

 さらりとそんなことを言われ何故か赤面してしまうジルだった。



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