かわらないこと

「お別れだね」


寒そうに枝を震わす、葉を落とした木々。
暦の上ではやっと春になったばかりの今日、卒業式が行われた。
進路がまだ決まっていない進学組とは違い、就職組はばらばらになることが確定している。
海外にいく人間も居るほどだから、県外なんてのはざらで。
友人とはいつでも気軽に連絡が取れる。
会えなくても支障はあまり無い。話せるだけで十分だ。
だが。

友達以上、恋人未満。

そんな関係の多い学校であるから、当然といえば当然。
お祝いモードとはかけ離れている。


「寂しいなぁ…」
「そうか?別に死ぬわけじゃねーし」
「そりゃそうだけど。なんていうか、だって。
皆にもう簡単に会えなくなるんだよ。学校にくれば会えたのに」
「まぁなー。…不安?」
「……そりゃ、…もちろん」

HRも終わり、写真も粗方撮り終わり部活の集まりへと移動して行った友人たちのいない教室は、何も映さない鏡のようなガラスのようで。
担任は担任で会議だとか言って早々にいなくなった。
前日に部活での別れを惜しんでいる美術部の二人だけが教室に残っていた。

「忘れんな、絶対。
お前は一人でやり遂げることができるくらいの力なら持ってるから」
「…うん」
「んな不安そうに笑うなって。一人で無理なら俺だっているし、大事な友達だっているだろ」
「そ、だね、うん。…うん、そっか」
「おう」
「頼っちゃダメなわけじゃないもんね。少し遠くなっちゃうだけで、それ以外、何も変わらないんだもんね」
「おー。…何?変わってほしかった?」
「まさか。にやにやしやがって、いじわるだなぁキミって人は」
「今更?」
「確かに」

「くっ」
「ふっ」
「くくっ」
「ははっ…!あーもー、キミはぶち壊すのが得意だよなぁ本当」
「なら期待に応えよう」
「お?何なに?」
「ずっと好きだった。これからも傍にいて?」
「…な、に。もう、本気にするよ?」
「本気にしてよ。本気だから。
卒業だから終わりなんてのは、嫌だから」
「…ばか。ばーか。 なんだよせっかく泣かないですみそうだったのにぃ…っ」
「馬鹿で結構。我慢なんてすんなよ、身体に悪ぃ」
「キミはまるであたしを病弱のように扱うね」
「事実だろ。コートも持ってこない阿呆だし」
「だって春なんだよ」
「一日だけな」
「う、ぅうー…」
「おとなしく抱きしめられててよ、どっちにしろはなさないから」

桜に染まるのは、瞳じゃなくて頬がいい。
うさぎじゃなくてりんごになって。

強がりの卒業、おめでとう。


_______
memo.
clapより移動
20111104 hina.


_____
ナノさんを使っていたことを忘れていて前のにあげていたもの。


prev next

bkm



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -