口は災いの元

「力を持つということは人を守る力を持つということ。

つまり、軍事力はなにも攻めに使わなくてもいいわけ。
わかった?」



「うー…ん。
わからないでもないけど
、でも、力を持ったから戦争が起こったわけだよね?
だったら、始めから力がなきゃいいんじゃないの?」



釈然としないなぁ。

いや、確かにわかるんだよ?
攻めるから力が有害だってのは。


でもだからって、さぁ。
力を持っちゃうから戦争が絶えないんじゃないの。



「はー、わっかんないかね、お前は。
力がなきゃ袋だたきだよ、喧嘩売られたらその時点で喧嘩じゃなくて虐めが始まるんだよ、ヤられ放題だよ、正当防衛だとか言ってらんないんだよ?

……ヤられたらヤりかえす、ってあるけどさ。それはあくまで予測できなかったときのハナシじゃん。
予測できて防げるんならそれに越したことはないでしょ。
それとも何?
守るのに理由が必要なわけ?」



…っ、うわーん!
なんか亨ちゃん怖い!!

私はただ軽く本っ当にかっるーく、日本に軍隊も核兵器も要らないよね?ってただの興味本位で言っただけなのにぃ!!!



「り、理由なんかは要らないけどっ、でもでも!勘違いだったらどうするの!!」


「日本っていう太平洋の端に在る島国で?
アメリカ大陸からなら勘違いって可能性は有るかもしれないけど。
ユーラシア大陸からなら、勘違いなんて無いんじゃない?」


「だけどっそれでなんか言われたりそれこそ攻められちゃったらどうするのっ?」



はぁー、と深い溜め息を吐いた亨ちゃん。

溜め息吐きたいのはこっちだっての。



「いいか?優実。
戦争はしないだとかなんだとかはな、ホカのどの国と約束したわけでもない。
日本っつー国が日本国民に約束しただけだ。
他の国、外の国なんて関係ないんだよ。
ただ俺らが認めさえすればいい。

攻められる?上等だ。
あらゆる情報引っ提げて国連にでも言やいい。正当なんだから、な。

降り懸かる火の粉は降り懸かる前に消せ。
売られた喧嘩は売り飛ばせ。
テメェの尻はテメェで拭け。
守るための力を持て。
守るための権利を振りかざせ。


最初にも最後にも、テメェのこと守れんのはテメェだけだろ、優実」




、卑怯だ。
私の昔の言葉、使うなんて。



私と亨ちゃんが幼稚園生のころ、いじめられてた亨ちゃんに言ったこと。


『ゆみはいつだってとおるちゃんのみかたでいたいけど、いつもまもれるわけじゃないから、
とおるちゃんは、とおるちゃんをまもってね。
どんなときだって、とおるちゃんはとおるちゃんのみかただから!』



私自身あんまり記憶になかったけど、ビデオにたまたま映ってたみたいで。
亨ちゃんのママに教えてもらった。


それ以降、自分自身にも言い聞かせてることで。



"私しか私を守れない"



一種の座右の銘と化している。




「っ、わかった。うん、納得する」


「納得するって、お前…」



苦笑していた亨ちゃんが、私が一呼吸置いたことを不思議そうに眺めた。



軍事力はいいや。

うん、さすがに納得した。


でも、なんだよ。



「でもね、核兵器については別だよ。
あんな悲惨なこと、起こってもいいの?忘れたわけじゃないよね?」



「当たり前。
ってかだからこそだろ。

あんなことができる兵器を持つ国に、誰が喧嘩吹っかけようとする?」



「……抑止力ってこと…?」

私が考えをぽつりと零せば、ん、と笑った。



「そ。
それに関していえば米軍基地もそうだよな。

今日本は言うまでもなく、アジア諸国にナめられてるっても過言じゃない。
それでも貨物船が襲われたりしてないのは偏に米軍のおかげっつってもいいと俺は思う。
自衛隊は権利が少な過ぎて正直あんまり役に立たないし、新たに沖縄に置いたら軍事費が半端ないことになる」



「アメリカに頼んなきゃなの?」



「つーか、互いに?
利害一致とかしてんじゃねーの。俺はよく知んねーけど。

どう?
これで解決した?」



………うん、まあ。
こんだけ聞けばね、うん。

ただ何があってそんな思想になったのかわけわかんないな…。うん、ムカつく。
悔しいし。亨ちゃんのくせに。


でも、さー。
これって大分異端だよね。


よし。



「…まぁ……。
でも、こんな考え方はじめて聞いた。
大分と異端なんじゃないかな…」


「ああ、それはメディアのせい。
面白おかしく人の興味をそそるものを、が基本理念なんじゃねー?いや、知んねーけど。
とりあえず、事実を曲げはしてないだろーけど、事実を隠すぐらいはしてんだろ。
金とか視聴率とか多分絡んでんじゃね?」



私の疑問をあっさりと解決したこの男。

将来日本を変えてくれないかな、と真面目に願う私がいる。



……そこまで失望していた気はなかったんだけども。




「はぁー。なんか、先が思いやられるねぇ、日本の」


「まあな。
にしても、口は災いの元って真理だよな。
いい加減はっきりしろっての、バカ親父」


「あはは。
……言い付けるよ?」



「ドーゾお好きに?」




何となく、望む未来は近いのかもしれない、と思った。



「あ、親父に会いに行くならついでに結婚の報告もしといて」




「は………?」



「一緒に世界征服してみませんか? 優実さん」


「〜〜っ…亨より先に天下とるっ!」




(マジ、愛してる)(知ってるばか)(ん、じゃあお前は俺のもの)(、ってことでイタダキマス)(っバカーー!!!)



―――――――――――――

あとがき

多少過激な発言が多々ありましたが、まあ、真実だったりするのかな、と。
しっかりと日本の未来、考えたいものですよねぇ。
亨みたいな政治家出てこないかなぁ←
過激すぎるのはダメですがただ主張するなら自由ですよね!
ここまでお読みいただきありがとうございました!


20100509


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