ーーー夢を見た。



「クラウド!」

ティファがクラウドを呼ぶけど、彼はこっちを見たあと、すぐに視線を外して歩いていってしまう。
ティファがムッとして「また無視した!」と頬を膨らませて怒り、それを一緒に遊んでいた男の子たちが、クラウドなんて放っておけばいいと、今日は何して遊ぼうかと、そんな話を始める。

「ティファ。あたし、クラウドのこと呼んでくるね」
「なまえ、クラウドなんて放っておけよ!おれたちと遊んでようぜ」
「うーん…でも、あたし行くね」
「うん。なまえ、よろしくね!」

これは、小さいときの夢。
故郷のニブルヘイムでクラウドやティファと過ごした頃のもの。

クラウドは大勢で遊ぶのが苦手だったのか、ティファがいつもの子たちと遊んでるのを見ると、呼んでも一緒に遊んだりはしなかった。
だからあたしは、何度かみんなで一緒に遊ぼうって誘いにクラウドを呼びに行ったりしてた。

「クラウド、ティファたちのところ行かない?」
「俺はいいよ。なまえもアイツらのところに行けばいいだろ」
「んー…今日はクラウドと一緒に遊ぶ!この間ね、あっちの方にきれいなお花畑見つけたの!」
「花?俺は、別に…」
「見つけたら、1番にクラウドに見せたいなって思ったの。クラウド、お花きらい?」
「はぁ…わかった、わかった。一緒に行けばいいんだろ!」

みんなで遊ぼうって誘いに行きながら、本当は誰よりもクラウドと一緒に遊びたいのはあたしで。
子供ながらに、クラウドを独占できる時間が嬉しくて。
あの頃から、あたしはクラウドのことが好きだったんだろうなって、そう思う。

でも、クラウドが好きだったのはティファだったんだよね。
あのとき、ティファが呼んで、こっちを見てから悔しそうにしてたのはーーーきっと、本当は2人で遊びたかったんじゃないかって。
あたしが、独占できるのが嬉しかったのと同じように思ってたんじゃないかなって。

そう、今ならなんとなく思うんだ。



ーーーーーーーーーー



「もしもーし」
「…ん…」
「あ、起きた?大丈夫?」

目を覚ますと心配そうに覗き込む緑色の綺麗なまん丸の瞳と出会う。
初対面なはずなのに、優しい声色にどこか懐かしさを覚える。
ゆっくりと起き上がり、なんだかとてもいい匂いに包まれていることに気付き辺りを見回すと花畑の真ん中にいた。
だから、あんな夢を見たのかもしれない。

「何処か痛いとこ、ある?」
「…大丈夫…みたいです」
「うん。怪我もないみたいだね。お花の様子見に来たら倒れてたから、ビックリしちゃった」
「ありがとう、ございます…あの…」
「わたし、エアリス」
「なまえです」

エアリスと聞いて、すぐに思い出す。
ザックスの言ってた「泣かせたくない人」が目の前にいた。
未来をみた時に泣いてた彼女とも雰囲気が一致するから、きっと彼女がザックスの特別な人。

ただ、あの時は泣いている姿だったので、実際の印象とのギャップに戸惑うけど、本来の彼女はこちらなのかもしれない。
笑顔が素敵で、温かい人、そんな印象だ。
ザックスと笑っている姿を想像するとしっくりきて、きっと想像の通り一緒に笑っていたんだろうと思った。

本当だったら、ザックスの無事を伝えてあげられれば良かったんだけど、神羅に連れて行かれたあの日から2人の消息がわからない。
だから、ここで安易に伝えることは出来ない。
でもそんな難しいことは抜きにして、目の前のエアリスの表情を曇らせたくないと、そう思った。

「…だいじょうぶ?」
「え?」
「難しい顔してた」

眉間を指摘され、思わず触れるとエアリスは楽しそうに笑った。
こういう表情にザックスも癒されていたのかもしれない。
そう感じる自分も同じ気持ちだからだ。

「でも、お花畑に眠ってるなまえ、なんだかおとぎ話のお姫様みたいだったね」
「あ、いつまでもごめんね!エアリスのお花…つぶしちゃった」
「だいじょうぶだよ。お花、強いし」
「でも…」
「じゃあ、お手入れ、手伝ってくれる?」
「もちろん!」

それから、一緒にお花を手入れしていく。
黄色い花が多いけど、中には白い花もあって、辺りはとても甘い香りに包まれている。
天井の右側にある大きな穴から、太陽の光が降り注ぎ、それがこのお花たちが元気に育つ要因になっているようだ。

お手入れをしながら、こっそりスマホで時間を確認する。
あれから、24時間以上経っていたらしく副社長からのメッセージが表示されていた。
「賭けはお前の勝ちだ。残念だが、自由にしてやろう」という、簡潔な文面のメッセージ。
ひとまず、当面は安心して過ごせるはず。

どうやって、ここまでたどり着いたか思い出せないけど、確か気を失う前に教会が見えた気がした。
なんだか導かれるように、教会の扉を開き…その先は思い出せないけど、きっと、お花畑に吸い込まれるように倒れ込んだのだろう。

「なまえ、どこに住んでるの?プレートの上?」
「えっと…今は、どこにも」
「それなら、うちに来る?なまえなら、きっとお母さんも喜んでくれると思う」
「え?でも、そういうワケには…!」

ぐーっと、恥ずかしいくらい大きなお腹の音。
それは、あたしのお腹の音で、思い返せば、24時間以上何も食べてない。
恥ずかしくて俯くあたしに、エアリスは優しく笑う。

「決まりだね。お母さんの料理、すっごく美味しいから、楽しみにしててね」



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