束村家ホームビデオの乱


ある日、拓海くんは幼なじみの涼ちゃんから白い柴犬をあずかりました。

「あのね、あのね、今日お泊りだからね、涼のわんちゃんあずかってほしいの…」
「涼の?」
「うん、可愛いでしょ!
イザベラ!!」
「イザベラ…?!」

ひょっこり涼ちゃんの後ろから出てきた白い柴犬は、イザベラと言う名前です。
涼ちゃんが一生懸命考えた名前です。

「…別に、いいぞ!俺様が特別にイザベルの面倒見てやるよ!」
「違うよ!イザベラだよ!」

拓海くんは、涼ちゃんの大事なイザベラを預かる事になりました。



「イザベラーご飯ー」
「わふっ」

なんだかんだ言って、拓海くんは素直にイザベラのお世話をちゃんとしています。
偉いね、拓海くん!

「…」

おや?拓海くんがキョロキョロ仕出しました。
どうしたのでしょう?

「イザベラ、イザベラ」
「わふっ?」
「………イザベラ、喋れるの?」

拓海くんは、いきなりイザベラの前にしゃがみ込んで尋ねました。

「…喋れるんでしょ?」

まだ食事中のイザベラを揺すりながら拓海くんは尋ねます。
ここで小さな夢を潰す訳にはいきません。

『そうだよ!喋れるんだよ!』
「本当に!?」
『拓海くんの前だけの特別さ☆』
「うん!特別!」
『だから、お父さんにもお母さんにも、涼ちゃんにも秘密だよ!』
「ナイショ!」

拓海くんは可愛らしく人差し指をぷくぷくのくちの前にそっと添えて、ニコニコ嬉しそうに笑いました。







「………っていうホームビデオ見つけちゃいました!拓海さんめちゃくちゃ可愛いですよ!」
「見たい!」
「えへへ、そういうと思って持ってきちゃ…」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ涼テメェぇぇぇぇぇぇぇぇ!!消せぇぇぇぇ!!」




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っていうくだらないホームビデオ事件。
ナレーションとイザベラの声は拓海の親父の仕業


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