第12話
ひさしぶりに夢をみた
第12話
俺がまだ東京にでてきたばかりのころだ。
知らない土地だったこともあり、俺は興味本位で散歩にでた。
行くあても決めずに、ぶらぶらと歩く。
坂をのれば、町全体が一望できた。
「きれいでしょ…」
風と共に聞こえた声。
周りをみわたすとひとりの女の子が神社の桜の木の上に座っていた。
巫女服をきた女の子。高校生がバイトしてるんだと思った。
素直に彼女の言葉にうなずけば、驚いたようだった。
――あたしがみえるの?
「あたりまえやろ、なんでそんなこと聞くん?」
ただ寂しそうに笑っただけだった。
「なあ、そこの神社でバイトでもしてるの?」
「そんな感じかな?」
「自分のことなのに曖昧かい」
あはは、ごめんごめん。
そういって笑う彼女の姿が誰かに重なった。
「また遊びにおいで、あたしはいつもここにいるから」
「近いうちにくるわ」
強めの風といっしょに桜の花びらが舞い落ちる。
まってるから………
ゆ う し …
「ッ!…はぁはぁ」
昔もうひとりあたしを見えた子がいたんだ――
そうか…。すっかり忘れとった。俺は昔サクラに会ったことがある。
引越しの片付けとかで忙しくもう一度あの場所に行けなかった。忙しすぎていつの間にか忘れとった。
そうか、あの頃から待っとったんや。やっと話しできる子ができたんや、あたりまえよな。
ごめんな、今も昔も俺はどうしようもないな…
「サクラ、俺はどないしたらええ?」
会いたい、会って、話して、抱きしめて。
「サクラ、サクラ…」
どんなに叫んでももう君にはとどかない。
このやり場のない気持ちをどうしたらええんや…
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