5色







始めてのテニス








雲ひとつない快晴。そんな絶好のテニス日和に立海のみんなや八知とテニスする約束をした。




カーテンと窓を開け、外の空気を吸い込む。ひとつ伸びをして、準備をし始める。








「おはよう。ごめん、待った?」




マンションのエントランスに行けばテニスバックを持った仁王がすでに待っていた。




「今来たとこ。んじゃ行くかの」


「あ、それ…」




バックと一緒に手に持っていた重箱をあたしの手から取って歩きだす。中には皆の分のお弁当が入っている。




「柊のことじゃ、皆の分作ってくれたんじゃろ」


「だけど…重いよ?」


「これくらいなんともなか」








仁王と電車に乗って、テニス場に向かう。




待ち合わせしたテニスコートの近くまで来ると打ち合うボール音が聞こえてくる。




「咲夜おっそーい!」


「ごめんごめん、これで勘弁して」


「わーい、お弁当だ!」


「では、みんな揃った見たいですし、そろそろ始めましょうか」




八知はブン太と赤也から教えてもらうみたい。あたしはとりあえず軽く準備体操をする。




「んー、気持ち…い゙っ!」




急に背中を押されて、身体が前のめりになった。てか地味に痛い!!




「すまん、すまん。押し過ぎたの」


「もう、びっくりして心臓でるかと思ったよ」


「フフ、ほら咲夜にも教えてあげるからやろう」


「よろしくお願いしまーす」








***






「ボールが来たらこうやって…」


「こんな感じ?」




仁王に続いてラケットを振ってみる。




「ラケットを少しこうやって立てたほうがよか」




ラケットを持つ手に自然と仁王の手が重なる。首元には息がかかる。




ち、近い!首がくすぐったい。て静まれあたしの心臓ォォ!




「柊顔真っ赤ぜよ」


「う、動いたから暑くなっちゃった!」




言えない。仁王にさわられたからだなんて……。
らしくないぞ、あたし!




「柊、疲れたじゃろ。休憩するか」


「なら、あたしみんなの分の飲み物買ってくるね」




財布を持つと逃げるようにして、自販機に向かった。




なにやってるんだろ、あたし。せっかく仁王が教えてくれてるのに…




「ねえあんたさっき雅治たちといた子だよね」


「はい、そうですけど…。何か用ですか?」




目の前にはさっきからテニスコートいた女の子。どうやら仁王たちのことを知ってるみたい。




「正直あんたらウザイんだよねー」


「なっ!いきなりなんですか、それだけなら失礼します」




全員分の飲み物を買い、コートに向かって歩きだす。あんなこと言われて気分いいわけがない。




仁王のこと"雅治"って呼んでた…。モヤモヤとしたものが広がる。






「なんかすっきりしない…」


「何がすっきりしないんですか」




振り返れば柳生くんが後ろにいた。




「ううん、なんでもない」


「すみません、さっきの会話聞いてしまったので…」


「そっか。変なとこみせちゃったね」


「仁王くんの元彼女なんですよ。咲夜さんは関係ないのに困りますね」


「ありがとう、柳生くん。でも、あたしは大丈夫だから」




そう笑って言えば、柳生くんは何も聞かないでくれた。
飲み物を半分持ってもらい、ふたりでコートに戻る。






「なんじゃ柳生と一緒じゃったか」


「遅いから心配したんすよ」


「ごめんごめん、はい飲み物」


「なんか朝の会話と似てる。ってジャッカルが」


「俺かよ!」






その後は持ってきたお弁当を食べて、またテニスをした。美味しいってみんなが残さずに食べてくれてほっとした。モヤモヤも少しはれたかな?




「咲夜先輩上達速いっすね」


「赤也たちには敵わないよ」


「八知先輩に比べたらぜんっぜんましっすよ」




あたしはある程度打ちあえるようになって来て今は赤也とラリーしてる。八知は…




「えいっ!…てありゃ?!」


「だーから、ボールよく見ろって」


「だって気付いたらボールが近くに来てんだもん!」




言い合う八知にブン太。なんだかんだで仲がいいんだから、見ていて微笑ましくなる。








「暗くなってきたな」


「ナイターの施設はあるけど一日やっているし、そろそろ帰るとしようか」






***






「今日は楽しかったー」


「八知はから振ってばっかりだったけどな」


「まあブン太そう言うなって」




話しているとホームに電車が入って来た。




「じゃああたし達こっちだから、またね」


「よかったらまた立海にも遊びに来てね」




幸村くんの言葉に頷き、あたしは仁王と一緒に電車に乗り込んだ。
楽しかったひと時と曇った心を抱えて。








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