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私は鬼道有人くんが好きだ。
公立中学に通ってた私は帝国学園高等部の入学式で新入生代表の挨拶の時に初めて鬼道くんを見て。完全な一目惚れだった。

一目惚れで外部生の私と内部進学のトップ生の鬼道くんではきっと関わり合いになれることはないだろうと恋に落ちた瞬間に失望した私に、神様が慈悲でもかけてくれたのだろうか。奇跡的に鬼道くんと私は同じクラスであった。帝国学園のトップというくらいだからきっと鬼道くんは理数科だと勝手に思ったのだけれど意外にも普通科だった。意外。

そして現在、入学して1ヶ月。私が恋に落ちて1ヶ月。私の鬼道くんへの恋心は増大していく反面、私と鬼道くんの関係は進展どころかスタート地点にも立てていなかった。

最初は鬼道くんと同じ部活に入ろうと思ってたんだけど、鬼道くんサッカー部って言うし、サッカー部は強豪校らしいし、そんなところにサッカーの知識皆無の私がマネ志望なんて出来るはずがなかったのだ。この時ばかりは私は自分がサッカーに興味を持ってこなかったことを後悔した。

普通に話しかけたりできないかな?とも図ってみたけれど残念ながら帝国は内部進学が多く、鬼道くんの周りには常に仲の良い子がいて、話しかけるなんて到底出来そうになかった。あとあんまり鬼道くんが女子と話さない。

そういうわけで鬼道くんへの糸口が全く掴めない。あと部活にも入りそびれてしまった。
最近は放課後に図書室で勉強している。
部活終了時間に合わせて帰ることで、帰りに少しでも鬼道くんに会えるのではないかという淡い期待を抱いてる。まぁ、会えたことは無いけど。
それは今日も例外ではなくて。さあ、今日も帰ろうかと図書室を出て、校舎を出る。ああ、今日も鬼道くんはいないのかな。落胆のため息をついて歩き出した瞬間、

「きゃっ」

誰かにぶつかってしまい、尻餅をついてしまった。

「ってぇな…」

「ご、ごめんなさい」

も、もひかん?相手の声に咄嗟に顔を上げるととても個性的な髪型の人がいた。ていうかヤンキーなの?謝ると面倒くさそうな顔をしながら構わねえよ、と彼はぶっきらぼうに言った。

「ほらテメエも早くノートしまえよ」

「あ」

そう言われて何故か今日に限ってカバンが半開きだったようで地面にノートが散らばってしまっていたことに気づく。しかもそれは彼も同じらしく、彼もノートを拾い自分の鞄に閉まっていた。私も急いでノートを拾って鞄にしまい込んだ。

「ちゃんと前見て歩けよ」

私よりも先にノートを回収し終えた彼はそう言って帰っていってしまった。
見た目は怖いと思ったけど、意外といい人なのかもしれないな。

周りが思ったより暗くなっていて、私も急いで帰路についた。


「嘘でしょ…」

家に帰り、勉強しようと鞄からノートを出そうと探り出した私は思わず絶句した。
ない、古典のノートがない。
もしかしてぶつかった時に落とした?
必死に鞄を漁ったのだけど、代わりに出てきたのは私のものでは無い数学のノートだった。
これってもしかして、いやもしかしなくても…

「あの人のだよね…」

実際、ノートには“不動”と名前が書いてあった。やっぱりノート取り違えていたみたいだ。やらかした。パラパラとノートを捲ってみると書いてある内容的に私と同じ1年生らしい。

「これ、きっと困ってるよね…でもノートには名前か書いてないしどうしよう、届けようにもクラスわかんないし…」

一人で頭を抱え続けてもなんの解決策も出なかったので、結局別の教科の勉強することにした。

「明日、どうしよう…」

今はどう仕様もないとはいえ、明日がとても憂鬱だ。



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