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魔法の杖あれは、まだオレたちが黄色星のひよっこ新人隊員で、前線で戦える赤星隊員へ昇格するために日々鍛錬に明け暮れていた頃の話…。
その頃のオレは、氷魔法を扱える素質があると周囲に言われていたにも関わらず、魔力を思うように扱うことができなかった。
隊総指揮官からは、焦らなくて良いと言われたが、周りの同期たちがどんどん成長していく中、オレだけ置いていかれるという焦りと危機感は募るばかりだった。
良い成績が出せず落ち込むオレを見かねた隊総指揮官は、新しい杖をプレゼントしてくれた。
プレゼントと言っても、この杖は練習用として国が貸し出している杖だ。
だけど、オレが今まで使っていたボロボロの杖よりも耐久性が高くて、なにより軽かった。
杖を変えただけで上手くなるのだろうか、半信半疑のオレに隊総指揮官は…。
ミケ)「この杖には秘密の魔法を掛けておいたから大丈夫だって、隊総指揮官様が言ったのかい?」
ナティア)「うん…」
隊総指揮官の言葉を信じないわけじゃないけど、そんな願掛けみたいなことを疑うことなく信じられるほど子供じゃなかった。
だから、友達のミケに相談したんだ。
ミケ)「それは凄いね!!」
ナティア)「えっ…?」
ミケ)「だって、あの隊総指揮官様が自ら魔法を掛けてくれたんだろう? だったら大丈夫!! この杖なら、きっと上手く扱えるようになるよ」
ナティア)「…そうなの?」
もちろんと強くうなずくミケを見て、彼がそこまで言うのなら、これは本当なのかも知れないと信じることができた。
今になって思うのは、あの時のミケは、隊総指揮官の策に乗っかったに過ぎないということ。
要は、気の持ちようなのだ。
カイ)「最近、調子良さそうじゃないか!! 魔物も倒せるようになってきたんだって?」
あれから数ヵ月。
同じく友達のカイが、気さくに話し掛けてきた。
二人とは入隊した部隊が違うけど、学生時代から良く遊んでいた友達で、卒業したあとも何かと気にかけてくれている。
ナティア)「うん 戦うの、まだ怖いけど… 魔法が上手く使えるようになるのは嬉しいから、なんとか頑張ってる」
カイ)「お〜、言うようになったじゃねぇか!! 心配してたんだぞ? 魔術師隊辞めるんじゃないかって」
ナティア)「隊総指揮官様のくれた杖のお陰だよ 自分に合ってるっていうか、不思議と手に馴染むんだ」
カイ)「ふ〜ん… 普通の杖に見えるけどな」
カイの言う通り、普通の杖だ。
だけど、オレにとって特別な杖。
上達しますようにと願う祈りが掛かっているから…。
数 年 経 過 し た 今 も
自 分 の 杖 を 買 わ ず に
貸 出 用 を 愛 用 中
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