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浮かれる気持ちは桃色これはいつだったか。
僕らが異世界へ行く前、まだ普通の中学生として、普通に生活していた頃。
タケルとヒロシのサッカー部の土日練習が休みになって、せっかくだからみんなで遊ぼうかってなった。
そんな、平和だった頃の話。
エリ)「へぇ… 来月、遊園地に行くんだ?」
ミホ)「そうよ タケルの家族と、あたしの家族で行くの 一泊二日で」
ジャンケンに負け、ひとりで飲み物を買いに行ったヒロシを待つ間、美保と絵梨の会話をぼんやりと聞いていた。
エリ)「あそこの遊園地、凄い人気でホテルの予約もなかなか取れないって話だけど、良く取れたね」
ミホ)「それがね、懸賞に出したら当選したのよ!! あたしの名前で!! だから、タケルに行こうって誘ったの タケル、あの遊園地が出来たときから行きたがっていたし」
エリ)「凄いじゃない 楽しんで来てね」
タケルと美保は幼馴染みで、親同士も仲が良く、両家揃って泊まりに出掛けることもある関係だ。
カエン)「…でもまだ告白してないんだよね?」
タケル)「えっ!? あ、あぁ… まぁ…」
学校でも美保と一緒にいることが多くて仲が良く、カップルになっていてもおかしくないのに、二人は付き合っていない。
お互いに好きだと口に出したこともなく、告白したこともないのだから…。
タケル)「なんか、今さら良いかなって」
カエン)「そんなこと言って…」
タケル)「その、言うタイミングがさ、わからないんだよ… ずっと一緒にいすぎて、一緒にいるのが当たり前で… 言わなくても良いかなって思っちゃうんだよな」
カエン)「そっか… 告白するのが怖いってわけじゃないんだね」
タイミングがないだけ。
きっと、そのときは来るのだろうけど。
ヒロシ)「甘いな タケルは」
タケル)「ヒロシ」
いつの間に帰って来たのか、ヒロシは人数分の飲み物を両手に抱えている。
ヒロシは、飲み物を僕に無理やり押し付けると、偉そうに力説を唱えた。
ヒロシ)「遊園地で告白… 良いタイミングだとは思わない? そう… 美保に告白する場所は遊園地!! 絶好のタイミングじゃないか!!」
タケル)「わー!! わー!! わーっ!! 声がデカイよっ!! 聞こえたらどうすんだっ!!」
タケルの声が一番大きい。
ヒロシ)「まったく… タケルは意気地無しだな 僕なんか、絵梨に断られてばかりだけど、望みはあると信じて当たり続けてるってのに」
タケル)「お前はもう砕けろよ!!」
ヒロシに押し付けられた飲み物を配りながらも、あの様子じゃあ告白はまだ無理だろうなと思った。
ミホ)「…ちょっと、なに?」
カエン)「さぁ? ふざけあってるだけだよ」
実際…。
遊園地での告白は無理だった。
遊園地に行く前に、僕らは異世界へ飛ばされてしまったからだ。
あの騒ぎで、遊園地の予定も無くなってしまったらしいけど…。
告白はしたらしい。
異世界で…。
そ れ で も
い つ も と 変 わ ら な い
二 人 が い る
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