※クラウドとライトニングが双子でセラがその妹以下略設定、二人がまだ微妙に幼い頃











ゴロゴロ、と空の向こうから低いうなり声が聞こえて、閉めていたカーテンを開けて向こう側を見やる。すると暗い暗い空の向こうに、光の亀裂が走るのが見えた。遅れて、ピシャーン、と大音量が響き、辺りも一瞬眩くなる。
「…?」
もう寝る時間だからカーテンを閉め直し、ベッドへ戻ろうとすると入口に気配を感じた。
誰だろうと思ってドアを開けると、そこには双子の妹が立っていて。
「どうした…?」
訊けば、妹は少し口元をモゴモゴとさせ、顔も俯かせてはっきりしない様子を見せる。こんな姿は、セラの前では絶対に見せない。別に、わざわざ訊かずとも雰囲気で解る。だって双子だから。でも、敢えて訊いてやれば、案の定の反応だった。
「…別にどうもしない。けど、何となく…」
「何となく…?」
まぁいいか、苛めるのも可愛そうだし、可愛い妹が自分を頼ってきた訳なのだし。
呆れたようなため息わざと吐けば、ぎろ、と妹が睨んできた。
「わかったわかった、俺が悪かった」
そう言ってスペースを空けてやると、さっ、と素早く潜り込んできた。そして布団を頭から被ろうとするので、俺も笑いながら妹を抱きしめて、頭から一緒に布団を被る。
もちろんベッドは、俺一人だけが寝るサイズなので二人というのはいつもより狭い気がした(妹はセラと一緒に寝るから広いベッドのはず)。けれども決して不快ではない。こうして兄である俺を頼ってきてくれるのは素直に嬉しい。俺も妹も普段素直でないし、だから余計にこういう時に頼ってくれるのは、男として誇り高いことだと思う。
まだ雷はピカッ、と光り、ゴゴゴゴ、と低くうなっている。
妹のふわふわした薄桃色の髪の毛に顔を埋めながら、更にぎゅ、と抱きしめてやれば。
妹は、それに応えるように背中に手を回してきた。
愛しい。双子ゆえにだろうか、セラのことももちろん可愛いのだが、こいつは特別だった。
最初、わずかに震えていた身体がだんだんおさまってきて、しまいには寝息が聞こえた。
妹は昔からこうだ、雷が鳴れば怖がって必ず俺のところにやってくる。
普段強がってかわいげがないなんて、周りからは言われるけれども。その強がりすら可愛いさなんだと思う俺も大概病気かもしれない。
雨が降る音。あいも変わらず空がうなる音。隣には双子の妹のぬくもり。
















そして俺も妹も21、セラが17の年に。
セラが始めにルシにされ、俺も妹も刻印を刻まれてから――――


















「おい」
「…何だ?」
用件なんかあっても聞かん、何となくそう聞こえたが、敢えてそれは無視をすることにして。
前をずかずかと歩く妹の背中にもう一度声をかける。
「あの少年のことも、もう少し気にしてやれ」
ホープと言ったか、ずいぶん沈んだ光を宿した少年だが、妹がペースも合わせずずんずん前を進むものだから着いて行くのに必死なようで、それが少しかわいそうに思えてならない。
「そんなこと、」
言われずとも解ってる。顔はそう言っていた。ここは戦場、俺と妹は軍隊に所属してるから慣れたものだが、あの少年は一般人だ。だから妹なりに気は遣っているのだろうが、あれは絶対伝わってないと思うんだがな。
「エクレール」
「――――っ、その名を呼ぶな!!」
怒られた。彼女の名前には違いないのに、彼女は違うと言い張る。
「ライトニング」
「…っ、…」
何故、そんな名前にしたんだ。呼ぶ度に泣きそうになる、そんな名前に。

















勇ましく光っては消える雷光のごとく、お前はその名をつけた。
一瞬で消えてしまう、そんな儚い名前をお前は選び、つけたんだ。




















かみなりこわい
(雷が嫌いなくせにそんな名前を名乗るなんて、ほんとうにお前は不器用なやつだ)


2014/07/01


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