※現代、810が高校生で8を祝う57組。











「誕生日おめでとうっス!!」
ぱぁん、と自分の家に帰ってくるなり何故か同級生と先輩二人に盛大にクラッカーで迎えられて、スコールは唖然とした。手にしていた買い物袋を思わず落としそうになったが、そこには大事な卵が入っていたので落として卵が全滅、という最悪の事態は何とか免れた。
バッツがずずいとティーダの前に出てきて良いから早く上がれよ、と急かしてくる。
(ここは俺の家の筈なのに何故三人が俺よりも先に帰っていてしかも鍵を開けて入っているんだ?)
スコールは姉と父の三人暮らしだ。父はほとんど家に帰ることがないので良いとして、今の時間帯は姉が夕飯を作って待っていてくれてる筈。すると携帯が鳴った。姉からのメールだった。


『今日は思い切り楽しみなさい。良いお友達と会えて良かったわね』


(どこが…)
良い友達、だ。と内心呆れつつリビングに行けば、そこには三人が飾り付けしたであろう装飾がそこかしこにしてあった。ティーダは運動部で毎日遅くまで練習に励んでいるのを知っている。バッツはフリーターで、仕事を掛け持ちで3つもこなしているから、仕事が終わるのは夜中を過ぎてからだという。クラウドも自営業でバイク屋を営んでいて、最近じゃ店の名前が売れてきて忙しかった筈だ。
三人ともそれぞれ忙しくて時間もバラバラな中、自分なんかの誕生日の為にわざわざこんなことをしてくれたのか。
そう思うと、胸の奥がじわりと温まって、鼻の先がツンとした。
にんまりとティーダが笑いながら、歌を歌い出す。
「はっぴばーすでいとぅーゆ〜、」
「はっぴばーすでいとぅーゆ〜♪」
続いてバッツも。そしてぱち、と電気が消えて。
「ハッピバースディディアスコールー、」
クラウドが、奥のキッチンから蝋燭を灯したケーキを持ってきて、
『ハッピバースディトゥーユー!!』
三人がハモって、
「誕生日おめでとうっスー!!」
と、ティーダが最後にもう一度クラッカーを鳴らしながら高らかにそう言ってくれた。
「ほら、主役は座って!」
「火を消すのは主人公の務め、だろ?」
クラウドにそう促され、ふぅ、と一気に消して。また拍手をされて、三人の笑顔がどこかくすぐったくて、始終顔を観られないように俯いていたのは、言うまでもない。




「あー、楽しかったっス」
「…お前が楽しんでどうする」
えー、とティーダは寝返りを打ちながらベッドに座っているスコールを見つめる(明日も学校があるので、ティーダはスコール宅に泊まることになった)。
「だって大切な人の誕生日パーティーなんだから、楽しまなきゃ損っスよ。それにスコールが喜んでくれたのが、一番嬉しいっス!」
「…別に、」
(喜んでなんか…)
嘘だ。と、内心自身に突っ込みを入れて、ティーダは起き上がり、スコールを上目に見つめてきた。
その雰囲気に疑問を抱きつつも、明日も授業があるので今日はもう寝なければと思い寝ようとすると、ティーダに布団の端を摘まれた。
「なぁ、スコール」
「…何だ?」
「俺、スコールのことが好きだ。ずっとずっと、一年の頃からずっと…」
「は…?」
突然の、告白。一瞬何を言われたのか解らなくなるも、意外と思考はすぐに戻ってくる。
ティーダは、今度はずずいとスコールに近づいて、スコールの言葉をじっと待つ。
そういえば、と、思い当たる節はいくつかあった。一年の頃から、ティーダとは何かと縁がありクラスは二年連続で一緒だった。何か行事がある時は同じ班だったりした。そういうのが積み重なり、またきっかけで、ティーダとは自然と一緒に居るようになった。
スコールにとっても、ティーダは嫌いではない。むしろ好きだ。だが、スコールは、ティーダの先の言葉を聞いて内心思った。
「悪いな…俺は、男には興味がない」







根本的に間違ってる









「夢も希望もアリマセン…」
「泣くなよティーダ、ほーら飴ちゃんだぞ」
「バッツ、そっとしておけ」






*スコールハピバ!



2012/08/23


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