※7と13が双子でその妹がセラ以下略設定、世界観は13のまま。ちょっと昔の話。











「どうした?」
そんな仏頂面をして。
「………」
全く同じ顔で相違点が何かと問われれば髪や目の色と性別が違うくらいか、世界でたった一人の双子の妹が仏頂面をすることはそう珍しくないのだが、今日は明らかに度合いが違った。いつもならただ黙ったまま何もアクションを起こさないのが、今日は帰ってくるなり鞄をリビングのソファへと投げつけたのだ。するとソファへとどかりと座り、ずっと黙りこくっていて、冒頭へと至る。
「…学校で、」
観念したのか、妹がぽつりと語り始める。
「学校で、セラを虐めた奴が居たんだ」
「…へぇ」
セラというのは、俺たち双子の少し下の妹だ。数年前に両親を亡くした俺たちにとって、セラは特別な存在だった。今日からは私がお母さんの代わりになる、と本来なら兄と姉である俺たちが言わなきゃいけないことなのに、その前に自ら言ったしっかり者の妹。双子の妹のライトにとって、セラは半分娘みたいな存在。いや、あるいはそういったカテゴリには分類できないくらいとにかく特別で大切な存在で、要するに双子の妹は極度のシスコンだった。
そんな大切な妹が虐めに遭った、となればライトにとってはただ事ではない。聞けばそいつらをセラの目の前で倍返しにしてやった後、セラに派手に叱られ、今に至るのだという(ちなみに今現在セラは帰宅していないので夕飯は俺が作ることになった)。
ライトは膝を抱え、すっかり塞ぎ込んでしまったようだった。それはそうだろう、セラの為に良かれと思ってやったことが反対の言葉と感情で返ってきたのだ、落ち込まない筈がない。
俺は手にしていた菜箸をまな板の上にそっと置いて、ライトの隣へと腰掛ける。
「セラの為だと思ったし、許せなかったんだ…何も知らない奴らがセラを馬鹿にしていることが…」
「そうだな」
そっと、細い肩を抱き寄せてやる。セラも細いが、双子の妹も華奢だ。力無い腕で一生懸命大切な妹を守ったその想いが、直に伝わってくる。ぐす、と少し鼻を啜る音に、苦笑。
「帰ってきたら、セラに謝らなきゃ…」
嗚呼、と思う。双子故に、解る。こいつがどういう想いでその腕を奮いセラを守ったのか。今どういう想いがあって、その言葉を口にしたのか。
不器用なのは互いに一緒だが、如何せん世渡りが下手な双子の妹は、こんな一途な所が唯一可愛いと思える。
「ライト、」
「?」
「夕飯作るの手伝ってくれ」


セラが帰ってきたら、これで仲直りしよう。


そう言うと、ライトは思い切り口をひん曲げた。酷い顔だな、女がそんな顔するもんじゃない。
「お前が作ってるのか…?」
「見て解らないか?」
エプロンを見せるように腕を広げれば、更にライトの顔が青ざめる。一人で忙しい奴だ。
「お前は何もするな!お前が作る飯は人間には食えない!」
「酷いことを言うな。第一セラが帰ってこなければ今晩は飯抜きになるんだぞ?」
「それでもお前が作った物を口にするより断然マシだっ!」
双子の妹は俺の家事スキル(特に料理)が全くないことがそんなに不服なのか、代わりにキッチンに立ってくれるらしい妹の背をソファから見つめる。だがどこまでも俺たちは双子で、ライトも料理はてんで駄目だ。第一セラが居れば俺たち二人はキッチンにすら入れてもらえない。
「ライト、」
「…何だ?」
「いつでも俺が慰めてやるからな」
「寝言は寝てから云えッ」
いつもの態にすっかり戻った辛辣な言葉、それに安堵しながら俺はソファの背もたれに身体を預ける。
「クラウド、」
「ん?」
「……ありがとう」
「…ああ」
全く、こんなに素直じゃない所まで一緒でなくとも良いのに。






腐っても双子



*おめでとう713day!



2011/07/13


n | b


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -