「夢を叶えた時、どんな気分だった?」 突拍子もなくティーダに尋ねてみれば、彼は口をぽかんとさせながら弄んでいたブリッツボールを頭の上に乗せた。 「何スか、突然?」 「純粋な質問だ」 深い意味はない、とさらりと言いながらもティーダの返事を待つ。以前も訊いた、各々が持つ夢。何の為に剣を取り何の為に戦うのか。 それに関して、俺は未だに見つけることができていない。 焦っているつもりはなかった。だがメンバーの中で一番返事が返ってきそうなティーダに、質問をしてみた。 うーん、と頭に乗せたまま器用にその体勢を保ち、腕を組んでティーダは悩む。 「何ていえば良いんスかねぇ…うまく言葉にはできないけど、イエス!俺天才!!ってガッツポーズ取った記憶があるっス」 まぁその記憶も曖昧なんスけど、と苦笑しながらティーダが続けた。 するとまたブリッツボールを手に戻してくるくると指で回しながら言葉を紡ぐ。 「でも、ほんとそういう時っていうか瞬間って、言葉にしたくてもできないモンじゃないっスかね。感情が先にきて、制御できなくて、ずっと興奮しっ放しっていうか。クラウドは、そんな瞬間なかったんスか?」 痛い所を突かれた。記憶を辿る限りでは、そんなことないに等しい。 黙りこくっていると、ふとティーダがボールを弄るのをやめて、ぽつりと呟く。 「けれど夢なんて、叶えた所でその先が見えないんスよね…」 「?」 言葉の意味が解り兼ねて、ティーダの横顔を見やる。時々見せる、大人っぽいティーダの横顔。その時ばかりは、顔は曇っていて。 ふと何となく、その横顔が泣いているように見えて頭をくしゃりと撫でてやる。 「昔、」 「?」 「あまり記憶にはないが、お前と似たような奴がいた」 「うん」 「俺はきっとそいつのことが好きだったし、憧れていた。きっとあの当時の俺からしてみたら、彼はまさしく俺の夢そのものだった。けれども記憶が中途半端でよくは覚えていないが、俺は夢というものが何なのか、どこかに置いてきてしまった気がする」 きっとこの世界で剣を握る理由が見つけられないのもそれが関係しているのやも、とティーダに語りながらそんなことを思った。ティーダは素直に俺の話に耳を傾け、そしてはにかむように笑う。 「見つかると良いっスね、クラウドの夢」 「なかなか、それが難しい」 「見つかるっスよ!俺が保証するっス!」 その根拠はどこにあるのやら、でもティーダの気持ちが嬉しくて、ごまかすようにまた頭をくしゃりと撫でてやった。 「お前も、」 「?」 「その先に、辿り着けると良いな」 「…おう」 お互い、少し迷子になったのかもしれない。 ならばその先に無事に辿り着けるように。 ティーダが迷わないように、夢の続きを視れるように、俺は祈りをこめて、また頭を撫でてやった。 夢の続き (視る為には、不器用な俺たちにはまずその道を行くしかない) 2011/07/10 |