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洞窟を抜けてすぐ、ライラたちはポケモンセンターの予約していた部屋で夕食も食べずに眠りについた。

麗音も瑞稀も折り重なるようにしてソファーでぐっすり眠っている。
ほほえましい光景だが、今はそんな様子を見ても心が落ち着かない。

すやすやと二人分の寝息(と麗音の寝言&イビキ)が聞こえてくる中、ライラは一向に眠れなかった。
コロンと寝返りをしてソファーと逆の方を見ると、榮輝と目があった。

榮輝も眠れないようで、てくてくとベッドの側に近づいてきた。

『…眠れないのか』

「うん。なんかさ、黎夜さんに言われたことが気になるんだ…」

まだまだ自分はガキだと。世の中そんなに甘くないのだと。
旅に対する憧ればかりが先走って。
油断は怖い、恐い。

でも、

「黎夜さんは、ああ言ったけど、私には誰も彼も疑うことなんて出来ない気がする。黎夜さんは、人間が嫌いなのかな…?」

ベッドの上から手招きすると、榮輝は枕元に座った。流石炎タイプ。暖かい。

『ヤツは擬人化していた。信頼できる人間がいるはずだ』

「そうだね。私はもっと慎重に行動するべき、かな?」

『例えば何も無いところで転ばない、とか』

「…失礼、な、そ……」

それは違うだろう。
と言い返したかったが、突然睡魔に襲われる。勝てそうにない。
隣の温もりが心地よい。緩慢な動作でそっとその羽毛を撫でれば、確かな温かさが伝わってくる。

『もう寝ろ』

「ん…」

それを最後にまぶたが視界をシャットアウトした。



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