「風呂一緒に入ろうよ?」
「え?」
飯を食べ終えた俺達はリビングでまどんだ後、隆二さんが帰ってくる前にってそんな提案をした。
「でも隆二が帰ってきたら…。お風呂はダメ。」
「なんで?いいじゃん。まだ帰らないよ。横須賀だよ、遠いっしょ。」
「そうだけど。」
いつまでたっても変わらない俺達の関係。隆二さんのいない時にこっそり愛し合う関係。雪乃はいつまで俺を二番目にしておくのだろうか?そんな些細な疑問は、時間がたつにつれて不満へと変わっていくようで。
「ねぇ、俺達ってさ…ずっとこのままなの?」
しびれを切らして思わず強めの口調でそう言ったんだ。途端に切なそうな表情で口を閉じた雪乃。なんだよそんな顔、ずりぃ。でも言えない。雪乃にプイってそっぽ向かれたら俺は生きていけない。もう俺の中で、雪乃って存在は自分以上に大事で。
「ごめん、でも。もう少し待って。私の気持ちもちゃんとするから。隆二を愛してる気持ちも…ちゃんとするから。」
「愛してるんだ、隆二さんのこと。」
「うん。ごめん…。でもタカノリのことも、ちゃんと愛してる。」
「ほんと?」
「うん、ほんと。」
「じゃあ一緒に風呂、入って?だめ?最初で最後の我儘…。」
困った顔の雪乃が小さく頷いた。あの時こうすればよかった。ああしたらよかった…そんなたらればは後悔した時に思うもので、この時の俺達は、ただこの瞬間を感じていたかったんだ。誰の為でもなく自分達だけのために。
―――風呂なんて入っちゃだめだろ。
どこかでそんな声が聞こえたような気がしたけど、俺は目の前の雪乃を我慢できなかったんだ。
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