秘密の共犯者

「出発進行ー！」


ケンちゃんの助手席に朝海を迎えての出発。まこっちゃんの車酔いも少し治まって私達はまたキャンプ場コテージのある山奥へと急ぐ。でも、前を走る陸の車を見つめる朝海の視線は切ない。


「壱馬そのタコまこっちゃんの酔いに繋がらない？」
「は？なんで？」
「臭い、？」


一番後ろで転がっているまこっちゃんを振り返りつつ隣でたこ焼きを頬張っている壱馬の腕を軽く叩いた。もうちょっと気使ってあげたらいいのに…って思うんだけどなぁ。


「マイコ俺大丈夫！」
「ほんとに？また辛かったら言ってね？」
「うん。ありがとう！」
「…甘いで慎に。」


そう言いつつたこ焼きを私に差し出す壱馬からパクついちゃったけど。だってホクホクしてて美味しそうで。そんな私を見て目を細めて笑うと「マイコも共犯。」ポンポンって壱馬が髪を撫でた。…もう、ずるいなぁ。…陸もゆきみもこのキャンプで想いを伝えるって言ってたけど、壱馬はどうなんだろう？壱馬は誰に想いを伝えるの？朝海？ゆきみ？…それとも…―――


「あー俺ちょっと寝るわ。」


いつの間にかたこ焼きを全部食べ終えていた壱馬が、お茶をがぶ飲みしてからスっと私の膝に寝転がった。…―――は？え、壱馬！？


「ちょっと壱馬…。」
「寝不足やん。寝かせて。」


そんなぁ。困る困る、こんなの。後ろのまこっちゃんは酔わない様になのか？イヤホンを耳につけたまま目を閉じているからこっちなんて見てなくて。運転席のケンちゃんが不意にチラリとバックミラー越しに目が合う。ほんの一瞬目を見開いたけどすぐに優しく微笑んで視線を前に戻した。キャップを頭に被せて私の膝の上に寝転がった壱馬は、そのまま静かに眠りにつく。車内は朝海の陸への想いが溢れる会話がひたすら流れていた。


「花火大会の為にね、陸が好きそうな浴衣買ったんだー！でも手持ち花火もいいよね？」
「男は浴衣に弱いからなぁ。」
「髪はあげた方がいいかな？」
「まぁうなじが見えた方がセクシーだなぁ。」
「やっぱり？じゃあそうしよ。ゆきみにやってもらおう！」
「川と海もあるけど、はしゃぎすぎんなよ？」
「はしゃぐよ、陸がいるんだもん。」
「全く目が離せない奴。」


ポンポンってケンちゃんの手が朝海を優しく撫でる。そこに愛はないのだろうか？私には大きくて温かな愛にしか見えないよ。そっと壱馬の手を握ると、ゆっくり握り返してくれた。起きてる？…もう一度ギュッと壱馬が私の手を握るから、なんともいえない気持ちになったんだ。

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