それでも好き

【said 朝海】

「美味しー。ここのソフト有名なのに。陸と食べたようって思ってたのに。陸のバーカ。バーカ。ゆきみにフラれちまえ！そんでもってあたしの魅力に堕ちやがれ。」


ベンチの上、膝を抱えて座るあたしの隣、煙草と珈琲のケンちゃんは紫色のサングラスをかけている。遠目に見える陸は北ちゃん達と喋っていて、太陽の光を浴びた金髪がここからでもキラキラして綺麗。


「あたし、どーしても陸がいい。陸がどんなにゆきみを好きでも、それでも陸がいいよーケンちゃん。」
「おー。素直が一番。それでいい。」


ポンポンってケンちゃんの手があたしを優しく撫でる。いつだって安心できる温もりのケンちゃん。loveとは違うけどあたしはケンちゃんがいなきゃきっと生きてなんていけないんだろうなーって思う。あたしの愚痴をいつだって優しく受け止めてくれるケンちゃんをあたしは120％頼りにしていた。


「花火、２人でできるかな？」
「できるよ。」
「星も２人で見れるかな？」
「見れるよ、大丈夫だから。」
「うん。あ、でもケンちゃんとも見てもいいよ？」


あたしが顔を上げるとサングラスの下、沖縄臭たっぷりな彫りの深いケンちゃんの大きな瞳と目が合った。真剣な顔でゆっくりと伸びてくるケンちゃんの手。…な、に？瞬きすらできないあたしの頬に触れると「ぐふふふふ、ソフトついてら、エロい朝海。」指で口端を拭われてそれをペロっと舐めた。


「ケンちゃんのがエロい。」
「魔性ケンタ出てた？」
「なにそれ！」
「沖縄じゃそう呼ばれてた。」
「ふは！沖縄行って確かめなきゃ！」
「いつでもwelcomeだよ！」
「そこは英語なんだ。」
「まぁ夢はFBIだから。」
「一浪してるくせに。」
「ぐふふふふ、気にすんな。」


緩いケンちゃんに癒されてまたちょっと元気が出た。やっぱり陸がいい。もっと陸の傍で色んな陸を知りたいよ。

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