めんどうくせぇ奴

「あのさ、壱馬どーしちゃったの?別に構わねぇけど、朝海にベッタリじゃねぇ?」
「なんやねん樹。別に普通やろ。俺達ただの友達やし。」
「じゃあ今出てったマイコは壱馬にとってなんなの?今までと何態度変えてんだよ?」


俺の言葉に壱馬がほんの一瞬だけ視線を外した。その先にいたのは慎で。なんとなく壱馬の考えが読めた気がする。まさかとは思うけど、慎とマイコの事、今更応援する気なわけ?


「マイコには慎がおんねん、大丈夫やろ…。」


ビンゴ。ほんっと面倒くさい奴だね壱馬って。小さく溜息をついた俺に、壱馬は視線を朝海に戻して二人でまた話し始める。だめだこりゃ。不安気に俺を見つめるゆきみの肩に腕を回してポンポンって撫でる。


「いっちゃん…。」
「ちょっと様子見ようか、しゃあないから。」
「でも…。」
「お前はどうしたいの?かき乱して纏める自信はあるの?」


悔しそうに唇を噛むゆきみに内心ほっこりする。こんな顔まで可愛いと思える俺って、結構馬鹿だよな〜なんて。


「ない。」
「じゃあ見守るしかねぇよ。」
「いっちゃん冷たい…。」
「どこが?俺お前の為に言ってんだけど…。」
「でも冷たい。どうにかしてほしい…。」
「自分でできねぇのに人にばっか求めんなって。」


…あ、言いすぎ?蹲っていた顔をあげるなりゆきみはそろそろとほふく前進で正面にいるケンタと陸の所に行くとこそこそと耳打ちする。


「りっくんお願い。」なんて甘えた声がした後、陸が「いいよ。」なんて優しく微笑んでいて。


「休憩しようって。」


ケンタの言葉にゆきみは朝海の腕を掴んでこの部屋から出て行った。



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