弱いわたし

【said ゆきみ】

「ゆきみ、北人…。ここ開けてもいい？」


コンコンってドアを叩く音と北ちゃんの声に顔を上げた。蹲ってシャワーを浴びている私の背後にもう北ちゃんは来ていて。イエスもノーも言ってないのにガチャリとドアを開けたんだ。ドアに背をつけて北ちゃんがスっとしゃがみ込む。


「北、ちゃん？」
「うん。俺このキャンプすげぇ楽しみにしてたんだ。馬鹿みたいに青春したいって。そーいうの一生していたいって思ってるから、みんなで星空見上げたり、浴衣着て花火大会行ったり、このメンバーとならいくらでも同じ時間を共有できて、色んな話して、腹が捩れるぐらい笑って…ってそう思ってた。でも実際はみんながみんな恋、してて、少なからずゆきみも、苦しい思いしてたんだって、今更気づいた。いつも置いてきぼりだね、俺って。こんな俺の事なんて、誰も好きになんてなってくれないよね、はは。」
「北ちゃん？」
「うん。当たり前じゃないんだって、ゆきみが隣にいることが。俺達もうただの幼馴染って言ってらんないんだって。」


基本的に感情を表に出すことのない北ちゃん。喜怒哀楽を激しく出す人じゃないけど、いつもの北ちゃんと少し違う感じがした。


「ゆきみの好きな奴って、どんなの？」


え、北ちゃん！？まさか分かってないの！？わたしが北ちゃんを好きなこと。


「…優しくて強い人。」
「そっか。俺も優しくて強い男になるから。」
「え、北ちゃん？」
「負けたくないんだ、俺。」
「…誰、に？」


だけど北ちゃんは名前なんて言ってくれない。


「もう一人で苦しまないで。俺に全部吐き出して。ゆきみのこと、守るから。」


北ちゃんがそんなこと言ってくれるなんて思いもしなかった。それは、友達として？それとも、男として？北ちゃんわたしのこと、どう思ってる？喉まで出かかっているのに、あと一言が言えない弱いわたし。優しい北ちゃんを困らせたくない。うううん本当は「友達だから。」ってそう言われるのが怖いだけ。わたしのことだけ見てほしい。わたしのことだけ好きになってほしい。頭の中ではそんなことばかり思っているのに、何一つ口に出せない弱い自分が嫌い。

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