ドストライクの男
人を好きになるのに、時間も何もいらない。
出逢って1秒だってあたしは本気の恋になる。
どんな人が好きか…。
顔、スタイル、性格…。
あたしは全部全部、陸がストライクだった。
出逢って1秒でこの人を好きになるってそう思えたのが陸だった。
「おはよう!」
爽やかな笑顔で車を降りた陸は荷台のドアを開けてあたしのドラム缶バックを後ろに積んでくれた。水色に金魚の絵がプリントされたタンクトップ姿の陸。今日の金髪は右肩上がりでどうにもかっこいい。絶対絶対このキャンプで好きって言わせたい。
「隣座っていい?」
「あーうん。」
苦笑いをするけどそんなの気にしない。陸の運転する車の助手席に座ってあたしは大満足。このまま二人だけで行っちゃいたいぐらい。真剣な顔で運転する陸を永遠に見て居たい、一番側で。そう思っているのに、次の目的地にはすぐに着いちゃって。駅前で楽しそうな3人を見て陸は優しく微笑んだんだ。
「おはよ!ゆきみ荷物貸して。」
「りっくんおはよ!ありがと。」
別に男2人もいるからわざわざ陸が出て行かなくてもよくない?つーかこの2人動けよもっと!
「朝海おはよ!」
でもすぐにゆきみに言われてニッコリ笑顔を見せた。
「おはよ〜!北ちゃんと樹もおはよ!」
「おはよ、朝海。」
「…はよ。」
樹、愛想ないなぁ相変わらず。どうでもいいけど。
「ゆきみ、隣座る?座ってナビしてよ?」
「え、でも朝海いるし、わたし北ちゃんと後ろでいいよ〜。」
「…そっか。じゃあサービスエリア着いたら一緒に遊ぼう?」
「うん!」
ご機嫌で運転席に戻った陸に「はい。」お茶を差し出した。
「おーサンキュー。」
そう言ってサングラス着用する陸。
「わ、それヴィトン?」
「そう。俺好きなの〜。かっこいい?」
「死ぬほどかっこいい!後であたしにもつけさせて?」
「まぁいいけど。シートベルトちゃんとしてね?」
「あ、うん。」
「ゆきみ、大丈夫?出発するよ?」
「はーい!」
「んじゃケンタ達のとこ合流するな!」
分かってる。陸がゆきみしか見ていないことなんて。陸を好きなあたしじゃなくても分かってる。現に樹は陸の暑苦しい好意を毛嫌いしているのか全く陸に話しかけてこないし。北ちゃんは鈍感すぎるから色々分かってなさそうだけど。
ねぇ陸、好きだよ。
振り向きもしないゆきみよりも、あたしのことちゃんと見て…。
そう願いを込めて陸の方を見つめた。
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