心拍数上昇

【said マイコ】


「ただいまー!」


元気よくコテージに入ってきた買い出し班。朝海に続いて入ってきた壱馬の顔を見て思わず目を逸らした。


「早かったね〜みんな。お疲れ様!あっちに麦茶あるから飲んでね!」
「マイコ気が利く〜。やっぱあたしが男なら絶対マイコをお嫁さんに選ぶ!」


冗談だろうけど朝海に言われて苦笑い。やだ私、うまく笑えない。もうどーしたらいいの?


「マイコ?なんかあったん?」


だってほら、壱馬がそんな私の態度に気付いてなのか声をかけてきて…。


「ないよ〜なにも!まこっちゃんが助けてくれたし〜。いひひひひ〜。」
「こらゆきみ!」
「キャッ!北ちゃん助けてっ!」


そう言うなり、ふわって北ちゃんの後ろから顔を出してるゆきみを捕まえようとするけど、しっかり北ちゃんが身体入れてゆきみのこと隠すから手が出せないじゃん。もう、こんな時だけちゃっかり守ってる北ちゃんなんて嫌いよ。


「慎がどうしたって?」
「違うの。虫がね飛んできて。それで私吃驚しちゃってテンパって転びそうになったのを偶然隣にいたまこっちゃんが助けてくれて…。それだけ。ね…?」


困った顔で樹に助けを求めると「抱き留めただけだろ、慎がマイコを。キスできそうなぐらいの距離だったけど…。」―――完全に助けを求める相手を間違えた。樹酷い!思いっきり樹を睨むと、クククって意地悪く笑った。


「へぇ〜慎がねぇ。マイコが無事でよかった。お前が怪我でもしてたら慎相手でも許さへんけどな。」


…トクンと胸が脈打つ。真っ直ぐに私を見て照れも迷いもなくそんなかっこいい事を言うのは壱馬以外いない。そうやって言われる度に、真っ直ぐに見つめられる度に、胸が熱くなってまた壱馬を好きになるんだよ。

いつだって私をドキドキさせるのは壱馬ばっかり。私も壱馬をドキドキさせたいのに。



― 13 ―

prev / TOP / next