04

「ケチ〜。」

「いや、そういう問題?」

「だってさ、こんな台風の夜に俺達二人っきり。さっきいい方の期待も貰ったし、ね?」


ニコって首を傾げて私を覗き込む岩田くんの可愛さったらない。ずるい、そんな顔。必死で張ってる理性も崩壊しそうになるし。女だって理性も欲もあるってこと、分かって欲しい。…――え、もしかしてわざと?わざと崩壊させようとしてるの?ウソ私、完全に策士にのエサ?…もう考え出したらキリがない私の脳内。でも目の前のその顔を見たら全部吹っ飛んでもいいんじゃないかとすら思えてしまう。


「…どうしてくれるのよぅ…。」


情けない声を出すと、あはははは〜って豪快に笑ってまた私をガバリと抱きしめた。短めの私の髪に顔を埋めて「シャンプーいい香り。でも絵未さんの香りもっと知りたい…。ほらこっち向いて?」…されるがまま岩田くんの手が私の肩を抱いてくるりと半転…あーもうダメ、かも。


「肌綺麗だね、つるつる。」

「…そんなこと。」

「あるよ。ずっと触れたかった。」

「ずるい、そんなの。」

「あは、今まで言わなかったくせに?って?」

「そうよ。急に色々言われてテンパってるんだから。」

「仕方ないじゃん。俺って狼なのかな?なんかこう、血が騒ぐんだよね…。」


ガオーってするその仕草すら愛おしいなんて思っちゃうから。なんかあれだ。きっと私、彼のことなら何でも受け入れてしまうんだろうな…なんて小さく思った。


「赤ずきんって歳じゃないけど私。」

「変わんないよ、歳なんて。俺の中ではあなたはずっとシンデレラ…。うわ、さすがにくさい!こんな台詞はダメだ。」


照れて真っ赤になってる岩田くんにクスっと微笑んだら「笑ったな?」そう言うと顎をガシって掴まれた。なにこの拘束、ドキつく。



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