椿色の貴方



乾いた人気の無い商店街を抜け、何度も引っかかる厄介な赤信号達を無事通り過ごし、ふと左手の腕時計に目をやると時刻は8時20分頃だった

丁度都内の目立つ大きな時計を目にしたのかナルトが声を上げる

幸い、交差点には朝から学生やらニートやら会社員、サラリーマン等が携帯片手に歩いていたり大音量で音楽を聴いていたり友人と楽しそうに会話に華を咲かせたりとにぎわっていたのでナルトの大声もそこまで目立つものでは無かった


「 オイ!そろそろ時間やべェぞ 、皆走るってばよ! 」


「 あちゃ〜.. 入学早々目は付けられたく無いんだよね、ナマエモタモタしないで走るよ!」


少し目を離してしまえば視界から見失いそうな勢いな人混みの中に私達は現在紛れ込んでいる

サスケはというと、ちゃっかりと私の右手を握りしめて汗一つかくことなく前をひたすら突き進んで行く



貴方が唯一苦痛を浴びる表情をする時


私がその理由を一番に理解してあげれる



「 ナルトと沙羅の奴 .. はぐれた様だな、大丈夫か?ナマエ 」


人混みを無事すり抜け先程よりは人気の少ない所へ出た

確かに辺り一面を見渡してもそこに広がるのは見知らぬ人が行き交い、大きなビル背後に真っ青な青空が広がる景色だけだった


「 私がモタモタしてるからだ、時間ももう30分回っちゃったしあの二人学校着いてるかも 」


「 誰かさんの所為で今日は散々な日だぜ 」


「 ... あの朝から過激なキスが無かったらもう少し早目に登校出来たと思うけど? 」


「 黙れ、此処で口塞がれてェか 」


「 変態 、バカ 」


「 フン .. 行くか 」


いつもの調子で軽い喧嘩腰に聞こえる言い合いを繰り出す、これが彼なりの照れ隠しであり彼なりの愛情だということを私は誰よりも知ってる

誰かに知られてたら困るんだけどね







それから私はサスケに手を引かれるがままに只突っ走り何とか学校の門をくぐり抜ける事が出来た

だけれど神様はそう私達を光へは導いてはくれない


一番目立つ所にある時計台は既に式の始まりの時間をとうに過ぎてしまっている

受付場は殺風景に見事に誰一人として姿が見えない


「 やっぱ式始まっちゃってる、どうしよっか 」

「 取り敢えず受付行ってみるしかねェだろ 、誰か居ると思うし 」


繋がれた手は離れることを知らず汗を滲んだ掌でも気にせず前を向き続ける


" 受付 " と書かれたテントの元へと脚を運べば其処には驚くことによく知る顔見知りが一人いた


「 サスケ、入学早々兄さんを悲しませないでくれないか。来るのが遅いぞ、今朝早く起こしたつもりだが 」


「 兄さん 悪い . だがアンタの仕事に支障は出ねェだろ 、さっさと受付済ませて途中からでも式に出るつもりだ 」


はぁ、と虚しく一人ため息をつくほうれい線がさぞ目立つ色男 うちはイタチ

彼はサスケのたった一人の肉親であり実の兄である

このブラコン兄弟の片割れ.兄のイタチはようやく私の存在に気が付いたのか此方を見つめてくる


「 ナマエも一緒だったのか 、全く..ナンセンスだ 」


「 イタチ兄さんそんな言い方は無いよ、寝坊したのは私だけどサスケが 「 あー、で、何処に名前書けばいいんだ? 」.. バカサスケ .. 」


私の言葉を遮るかの様に突如隣から声を張り上げイタチに尋ねる

当の本人は頬が真っ赤に染まり上がっていてきっと体温が凄く上がっていることだろう

こんな彼を見るのは彼女の私の特権

何てね


「 此処に名簿があるだろう 、残念ながらお前達はクラスが違う様だな 。取り敢えずそれぞれの名前欄に記入してくれ 」


サスケは3組で...沙羅は5組、ナルトは2組で私は沙羅と同じで5組だ

まだ沙羅が居るだけ救われたかもしれない

サスケに鉛筆を差し出されて真似る様に名前欄に○印を付ける


「 ... よし、ナマエ行くぞ 」


「 いや、待て。サスケだけ先に行け、ナマエには用があるんでな 」


「 まさかイタチ .. アンタの事は信用していたつもりだが手を出すつもりじゃねェだろうな .. 」


「 ちょ、サスケ 。それは無いって . イタチ兄さん私に用って何 ?」


「 俺がその気になればナマエ何て直ぐに物に出来るさ 。

とぼけるな、お前の風紀面についてうちの学校の生徒会長から話がある 。その格好で式場に入らせる訳にはいけないからな 」


「 クソ兄貴が .. 帰ったら覚えとけよ 。なら俺も待っとく 、生徒会長とやらがいつナマエに手を出すかわかんねェからな 」


「 めんどくさ .. いいよ、サスケ先行ってて 。直ぐ行くから 」


自分の姿を改まって見てみる

太もも当たりで止められた短いスカートに学校指定では無いベージュのセーター、入学式という聖なる儀式にも関わらずブレザーのボタンは開けたまま。何より髪色が茶髪という明るい色にナチュラルメイクを施してしまっている

中学の時といささか変わらない筈なのに何でイタチ兄さんは私を止めるんだろう


サスケは私に言われた事で素直に聞き入れあまり乗り気じゃ無いながらも渋々体育館へと向かって行った

それを見届けると再びイタチ兄さんに向き直った

だけれどイタチ兄さんは " 書記 " とバッジを付けた妖艶な姿を纏う姉御という感じの上級生と話し込んでいた

その人は淡い紫色の髪色をしていた
十分風紀違反だと思うのは私だけ?


「 小南わざわざすまない、直ぐに向かおう 」


小南と呼ばれた上級生は舞い散る紙の様に一瞬にてその場から姿を消した

何か急ぎの用でも出来たのか?


「 悪い、ナマエ 。俺は此処を外してしまうがじきに生徒会長が来るだろう 。」


そう言い残してその場に何の跡形も残らなずイタチ兄さんは走り去ってしまった


ポツン、とその場に取り残されてしまった私

この調子で時間が過ぎて行けば完璧入学式出られないよね

でも元々入学式何て面倒なものだと思ってたし逆に運がいいのかも知れない

でも今から長い説教を食らうのだと予想付けばそれさえも面倒に感じる


憂鬱な気分になりながら生徒会長と呼ばれる者を気長に待つことにした



「 あ .. ツバキが咲いてる 」

ふと足元に視線を向ければ其処には一輪の真っ赤なツバキが咲き誇っていた

辺りはコンクリートで埋め尽くされているので美しいツバキは不似合いだった


思わずしゃがみこみ指先でツバキへと触れてみる


一つ誰かの影が視界の片隅に捉えられた



「 式はどうした 、ガキ 」



聞き覚えのある声の主にはっと目を向ける

しゃがみこんでる為、どうしても見上げる形になってしまい物凄く見下される感に追われた

声の主は矢張り予想付いてた相手


今朝出会った感じの悪い赤髪の男だった



赤髪の男の片手には赤いネクタイが握りしめられている
きっとこの男の様子からすると仕方なく入学式だからということで服装を正して参加するも矢張り詰まらないから抜け出した、という感じだろう


赤いネクタイ
赤の学年カラーは3年生の筈
ということはイタチ兄さんと同期なのか


「 生徒会長に呼び出し食らったんで出ずに此処に居るんです 」

ガバッと立ち上がるも其れでも身長は私の方が大きく劣ってしまっている

下から睨み付ける形で彼を見た

ガキという言われ様に腹が立つ
この人に関しては悪い印象しか無い


先ず初対面の人にこんな言い方する?
礼儀がなってない

顔は問題なく整っているのに性格が腐っているなら意味が無い


「 お前 今朝うちはのガキと宜しくやってた奴じゃねェか 」

「 朝からそんな事してませんから . 後私達の事ガキガキ言うのやめてくれません? いい気しないんですけど 」


ついに思っている事を口に出して言ってやった

殴られるだろうか
恐らく此奴はヤンキーという部類に入るヤンチャボーイだと思う

胸元まで着崩したシャツの胸ポケットにはタバコの箱が透けている

髪の毛は赤髪だけれど染めている様には見えず地毛だと思われる
至る方向に毛先が跳ねているけれどそれもワックスなどでセットした風には見えない
恐らく癖毛だろう


「 .. ククッ 、この俺にそんな口叩いたのはてめェ位だぜ 。威勢のいい女だ 」


「 はぁ ? いい意味で捉えないで貰えますかね 。」


「 名前は 」


「 はい ? 」


「 二度言わせんな 、名前はって聞いてんだ 。」


「 何で教えなきゃいけないんですか ?意味わかんないですけど 」


二度言わた途端目の前にいる男の目付きが一気に変わり果てた

薄暗く光を灯していない瞳を宿す
少し殺気が含まれており私としたことが恐れ入ってしまった


「 ... ミョウジナマエ 」


「 矢っ張りな 、よくイタチから聞く女の名だ 」


「 矢っ張りイタチ兄さんと知り合いなんだ .. 」


小声の様に呟いた為何を喋っているかは男には聞こえなかったみたいだが、あ?と眉を潜めて睨みつけて来る

何でこんな男と硬派なイタチ兄さんが友達なのかがよくわからない

理解出来無い


「 取り敢えず式は出ろ 、もう直々終わるぞ 」


「 そういう貴方こそサボってるし 、全然説得力ありませんから 」


「 可愛気のねェ女だな .. 黙ってれば抱いてやっていい位の上玉なのによ 」


カチっとライターに火を灯す
瞼を伏せタバコに火を付ける男は魅力的に見え思わず魅入ってしまう程


「 何見ている 。ペインには俺から言っといてやるから早く行け 」


「 ペイン ... ? 」


「 うちの生徒会長の野郎の事だ 。」


「 ... まぁ、ありがとうございます 」


目も合わせず素っ気なく礼を言う
私はこの人を矢張り好めない

何故だろう、


ふと走っている途中に足元にあるツバキが目に入った

途端に脚を止め何も考えずに振り向く


校門辺りに赤髪の男は私に背を向けて帰宅しようとしていた


赤髪とツバキの色が見事にマッチしている


しいて彼のいい所を述べるとしたら
私の好きなツバキと一緒の色をしている所かな

貴方には勿体無い過ぎる長所


... あ、名前聞いてなかったな




まぁいっか




様々な思考回路が広がる中でも私は脚を進め無事に体育館へ遅れを取りつつも無事参加することが出来た




prev next




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -