挨拶と口付け




_____ 桜咲き誇る季節が今年も ...







「 ナマエ 、行くぞ 」

「 相変わらず早起きな事 . そんなに高校生活楽しみ ? 」

「 ふざけんな 。入学式早々寝坊するウスラトンカチよりマシだ 」


" 合鍵 " という生々しい名前を付けられた
鍵で堂々と私の部屋へ入ってくる彼

私の健やかとも言える睡眠を妨げられた
上に今日は世間では殆どの公立高校が
入学式 で満ち溢れている


何て面倒臭い . サスケと一緒の
学校なだけマシだけど


「 ... 用意出来無いんだけど 」


「 朝一番のキスしてねェだろ 」


「 はぁ ? 今日くらいもういい .. っん .. 」


サスケが呑気にテレビを付けて
容姿端麗なお天気キャスターのお姉さん
を眺めていたので私はそれを他所に
彼に背を向け真新しい制服へ着替えていた

その隙を狙っていたかの様に
後ろから包み込む様に抱きしめられる


相変わらずサスケの胸の中は暖かい


そして慣れないサスケ
未だに彼の心臓の音がトクントクンと
心地良く背中越しで伝わってくる


だけどそんな甘い誘惑に朝から
乗せられない難しい女が此の私

照れ隠しのつもりがどうしても素っ気なく
あしらってしまう

いつもの調子で振りほどこうとするも
呆気なく行き場の無い腕は彼の
大きな男を感じさせる掌に捕まっしまう


振り向いた途端



しまった




誘惑に嵌ってしまった女 ミョウジナマエ





濃厚な口付けを交わす

朝から淫行を行うつもりは毛頭ない
増してや今日は聖なる入学式だ

身体を汚してからこれから毎日
世話になる学校に脚を運びたくない

だけれどサスケの舌は熱を浴び私の
口内を舌で埋め尽くし此方の事など
気にしない様子で容赦無く犯す

思わず甘い吐息を互いが漏らし
欲が高まりだした



ピルルルルルルルルルル ...



聴覚に僅かに途切れ途切れに挟まる
私の携帯のアラーム音など2人の
男女は気にも掛けなかった

だが、流石に口付けに集中したい
のか慣れた手付きで口付けを交わしながら
私のアラーム音を止めるサスケ


これじゃ遅刻しちゃう


脳裏に上記一言がよぎるも
どうだって良かった


彼に乗せられ、思わずサスケの両肩を
キュっと握りしめる
其れは酸素を求める合図でもあった




ピンポーン




「 .. ! ! いけない 、行かなきゃ 」


「 チィ .. 」


流石に家のチャイムが室内に響き渡る
のとアラームが鳴るのには訳が違う様で.

唇を押し付けつつもバッチリと
目があいてしまった私達2人


我を取り戻しサスケの胸板を
力加減関係無く押した

はぁ、と溜息を付いたり眉間に
皺を寄せ腹立たしい様子を見せる
サスケは気にも掛けない

これが彼の性格だと十分に把握してるから


ハンガーにかかる1着の
ブレザーを手に取る

肩のパットは大きく私の華奢な肩には
とてもと言っていい程フィットしなかった

既製品臭い ..

ホワイトデーでサスケから貰った
香水を振り身体に甘い匂いがまとまり付く


「 随分気に入ってる様だな 」


玄関で既に靴を履き終え満足そうに
笑みを浮かべ此方を見つめてくる

時によれば匂いは誰かの物である
所有 の意味をも表す


男女兼用の香水は勿論サスケも
付けている為 、サスケは自分の女に
己の匂いを付着させさぞ満足している


「 ん 、まぁね 。サスケの匂い結構好きだから 」


「 結構じゃ無くて大好き、だろうが 」


私がトン、と靴を履いたのを確認すると
早速肩を抱き寄せスポっとサスケの胸へと
着地にも似た表現でとどまる

上手く歩けないし見せつけられるのは
あまり好きじゃないのに


家のチャイムが鳴ってから軽く10分は
経っただろうか

見慣れた友人達の顔はもう
無いかも知れない


「 すみませ〜ん 、直ぐ行きますぅ 〜 あっアタシちなみに1年の菊村沙羅っていうんで良ければ覚えててくださ〜い ! 」


「 頼むぜ 、じゃねェとうちの生徒会長が愚痴愚痴うるせェからな .. 」


「 お 、サスケにナマエ ! 来るの遅ェよ !お陰で上級生に注意されたじゃんかよ 」


見慣れた顔におまけに見慣れない
顔まで私の家の前に集結していた


「 ... てめェ等も遅刻か ? ったく、朝から宜しい事やってる場合じゃ無ェぞ 、入学式くらい顔出したらどうだ 」


サスケが殺気立った目付きで目の前に
いる赤髪の男を睨み付ける

赤髪の男は学年別に色が違うネクタイを
付けていない為正確に何学年かは
わからなかった

でも口調や妙に溢れ出てる此奴の
自信を見ると私達より歳上なのは
間違いなかった


そんな事を考えているうちに
赤髪の男は重そうな足取りで私達の
向かうべき先へと進んで行った


「 つぅか沙羅 !お前何媚び売ってんだってばよ ! 俺等の立場から口説ける場合じゃ無かったろ !」


此処にも居ましたド派手な金髪が
輝く様に目立つうずまきナルトが

隣のサスケに目をやると矢張りまだ
先程の出来事の苛々を隠せないのか
険しい表情を崩さないままだった

彼の性格上やプライドからして
あんな事を言われたら堪らないと思う


まぁ私は気にしないけど


「 ナルトあんたそんなのだから彼女もろくに出来無いのよ、イケメンにはいち早く声を掛けるべし!わかった?」


あ、ナマエサスケお早う と語尾に
思い出したかの様に付け足される挨拶

今度は先輩狙うつもりだな、沙羅は



中学の時からの決まった安定の
グループである私達は高校も晴れて
全員同じ所を合格し今に至る

家が近い為こうやって毎朝登校も
一緒に出来る訳だ



地に踏み締める一歩一歩に
体重が掛かる、

勉強が大の苦手な私
友達作りが下手くそな私
至る者に目を付けられる私

其れを考えるだけでも気が重たい


そんな私の気持ちに察してくれたのか
又強く肩を抱き寄せられる

安心する
男の人って、大きくて、暖かくて


「 相変わらずお熱いね〜お二人さん 」

「 何が悪い?」

「 あはは っ 別にそう怒らなくても〜 」


笑顔を向けながらさらりと
素直な感想を述べてくる沙羅

このくだりはそろそろ飽きて来たので
私は無視の一択で攻めてみる事にした


「 ベタベタするのはいいけどナマエはアタシの何だから過ぎるのは辞めてよね ! 」


べ〜っと赤い舌をサスケに向け
彼をドンと引き離させ代わりに沙羅に
抱き寄せられた

生憎だけど私に同性愛の趣味なんて
毛頭無いわ 、と言ってやりたい
くらい暑苦しかった



毎日こんな日が続く

又長い長い三年間が始まるのか ..



その三年に比例して " 独り " も
引き続かされてしまう


朝から憂鬱な気分になった



誰か私のブルーな気分を


そうだな






あの赤髪の男みたいな凛とした
赤色に染め上げて下さい





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