春の訪れ ×春奈
入学式、新しい学校生活が始まる日。昨日は、ワクワクして眠れなかった。だって、何かが変わるそんな気がしたから。
でも、最初から上手く行くなんて、ないよね。
(迷ったぁー!!)
私、音無春奈。雷門中学校1年3組。体育館にて集合だと言って、先生は先に行っちゃった。新入生を舐めてるに決まってる。体育館への行き方なんてよくわからないのに!
一緒に向かう友達もいなく、迷子になってしまった。というのも、私がトイレで長居しているうちに、クラスに人はいなくなっていた。
(もう、みんな行くの早すぎるよ…、ほかのクラスの子もいないし)
自分も急がなきゃと、早足で歩いていた。私の通う中学、雷門中学校の校内は複雑にできていて、たどり着くことは愚か、今自分がいる場所を把握できないでいた。
(校庭を歩けば目立つけど、もうこの手しか残ってない。)
下駄箱の所に着いて、上履きを脱ごうとした。
そんな時、「君こんなところで何しているの?」と後ろから声をかけられた。振り向いていみると、桜の花びらのように淡い髪を肩まで靡かせている女の子がいた。
目線を下にやると、雷門の制服を着ていて、上履きの色が赤だった。私のは青い上履きだった。
(うそ、先輩!)
「えと、迷っちゃって…」
「新入生か!分かる分かる。この学校無駄に広いのよねぇ。私もよく迷ってたし」
俯いたまま返事をすると、先輩は緊張気味の私を落ち着かせるように、落ち着いた調子でうんうんと頷いていた。
先輩の顔を見ると、目があった。先輩はやっとこっち見たねと、ふにゃっと笑っていた。その仕草にドキッとし、顔が赤くなっていないかとまた下を向いた。
すると、先輩は腕についてる腕時計を見て、ふっと微笑んだ。
「まだ入学式まで時間あるし、皆のいるところまで一緒に行こっか」の声とともに、先輩に手を引かれていた。
(綺麗だ)
先輩の動き一つ一つから目を離せなかった。
まだ緊張はするものの、先輩が他愛のない話をしてくれて、強張っていた肩がほぐれていた。
そして、前を見ると、一年が体育館前の廊下のところで集まって並んでいた。自分のクラスを発見すると、見知ったクラスメイトがこっちこっちと手を振っていた。
私も手を振って返すと、先輩に体を向けて「ありがとうございました」と頭を下げた。すると、「どういたしましてっ」と語尾に音符が舞うように、笑っていた。
「入学おめでとう!新しい学校生活楽しんで!」
と、右の手をひらひらとさせて、背中を向けて体育館の方に入っていった。
(すごく可愛い人だった)
さっきまで繋いでいた手を自分の鼻の所まで持っていった。まだ、桜の良い匂いがする。先輩の一つ一つの動きに見惚れてしまっていた。
(また、会えるといいな。)
既に春が来ているのに、私の春が来る、なんて思ってしまった。
(あ!先輩の名前聴けてない……)
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