若芽 ×風丸


アイツは、昔から困っている人を放って置けない性格でさ。俺がアイツと初めて会った時もそうだったんだ。

「いっっっつ」

「ははは、こいつマジで女みてえ!」

「おい、おかっぱぁ。嫌なら反撃してみろよ!」

雷門小学校に転校した初日、よく自分の髪の長さが理由で、クラスでも目立ってたから、孤立してたんだ。その中のガキ大将に目をつけられてたんだ。よく、校舎裏とか人目のつかないところで、いじめを受けていた。

「くっそぅ、お前らみたいなクソ人間のくせに」

そんな奴らに負けたくなくて、反抗してた。けど、相手は4,5人もいて、とても勝てる相手じゃなかったんだ。

そういう事があって、いつも休み時間、一人で席に座っていた。

でも、ある日、休み時間に俺の席の前にしゃがんであいつが話しかけてきたんだ。初めてだった。ガキ大将以外に話しかけてくる奴がいるとは思ってなかったから。

「ねぇ、いつも一人で遊んでるの?」

「……誰だお前」

「私はね、宇乃笑舞って言うの。あなたは?」

「……」

「へぇ、風丸くんって言うんだ。カッコイ名前だね。風丸くんって呼んでもいい?」

答えなかった俺に、笑舞は俺の机に貼られている名札を見て、そう言ったんだ。俺をそんなふうに言ってくる奴がいるなんて思ってなかったから、ビックリしたんだ。

「別に…」

咄嗟に出てくる言葉がそれしか出てこなかったんだ。でも、俺の反応を見た笑舞は柔らかい笑顔になったんだ。

「んね、風丸くんも私たちと一緒に遊ぼうよ。ねぇ、大ちゃんたちもいいよね」
「「おう!」」

円堂たちの同意を得ると、笑舞は俺の手を取って、教室の外へ引っ張っていく。強引な彼女に連れられながらも、廊下をかけて行った。先生の起こった声が後ろから聞こえるけど、それを気にする暇もないほど、俺の視界は輝いていた。




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