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2.














『ぎぃやああああ!!』






夜の住宅地、近隣のご近所さんにまでこだまするアタシの絶叫。

どたたたた、と騒ぎを聞き付けた弟が一人、サスケが浴室の扉を開ける。






「どうした姉貴!!……チッ、タオルしてんのかよ。」

『って早速その発言は実の姉に向かってどうよ!?』

「家の風呂で普通タオルなんかしないだろ。四の五の言わずに早く取れ。」

『何か会話の指向がずれてってるんですけど!?アタシのこと助けに来てくれたんじゃないのサスケくん!?』

「あぁそうだった。で、なに騒いでんだよ姉貴。」

『こここここれを見て!』






アタシがズビシッと指差したのは、実家の湯銭。

一言で言い表すなら、まさに“混沌”としているその中身。






『おかしいよねぇ!?何と何をどうしたらこんなヘドロ色のお風呂になんのよ!?ねぇ!?まさかどっかの誰かがタチの悪いイタズラを……!?』

「……これは………。」






わなわなと滑舌悪く報告するアタシに……名探偵サスケが、結論を出した。






「“タチ”の悪い“イタ”ズラ……まさしくイタチの仕業だな。」

『な…なぁんだイタチか、なら良かった……ってえぇええ!??』

「イタチの奴ここ最近ずっとブツクサ言ってたからな、美容だの肌にいいだの何だの。ちょっと行って問い詰めてくる。」

「それには及ばないぞサスケ。」

『うわ!びっくりした!ていうか手が手が手が!』






不意に聞こえた声は背後から、もう一人の弟うちはイタチ。

その手がアタシの首根っこに寄り添えば、細くて長い指が鎖骨をなぞっては何度も行き来している。






ぞわぞわぞわ……!な、なんだこれ、やな感じ……!






「喜んでもらえましたか姉さん。試しに塩素、アルカリ、漢方、それに香りの強いラベンダー、ヒノキ、柑橘、ジンジャーなども入れてみたのですが。どれも体に良いものばかりですよ。」

『だからってそれを全部混ぜていいっていう結論にはならないと思うんだけど!?』

「すみません、姉さんへのこの行き場のない愛しさが抑えられなくて……だから全部つぎ込んでみました。命名するなら“恋は盲目”。」

『あほぉ!!』

「おいイタチ、姉貴をこんな鍋風呂で煮詰めてどうする気だ。」

「どうって、見ての通りだサスケ。姉さんにはオレので、もっと気持ちよくなってほしくて。」

『主語!主語つけてイタチ!じゃないとただの卑猥ぃ!!』

「それより姉さん、何故タオルを巻いて実家の風呂に入ろうとしているんです?」

『あんたも言うかそれ!兄弟揃って変なとこ気にしなーいのっ!』

「どうせ使うならほら、こっちの丈が短いフェイス用のタオルで前だけ隠してみてください。」

『マニアックな提案すな!!ある意味全裸要求のサスケよりもタチ悪いわよ!?』

「……サスケ、お前に姉さんの裸体はまだ早い。」

「ふっ、残念だったなイタチ。この前姉貴を起こしに行ったら部屋でまさかの生着替え、」

『わーわーわー!!もーわかったから!!とりあえずあんたら風呂場から出ていけぇええ!!』






急いで二人を閉め出せば、ばたりと浴室の扉を封鎖する。

ゼェゼェと荒く肩を上下させ、苦しくなったタオルをはらい背中を扉にくっつけた。






(はぁ、はぁ……もう、何がどうなってこうなったの……!?)






前回同様シスコンを通り越して、どこぞの薄い本にありがちな展開にまで踏み入ろうとしている現状。

しっかしアタシが実家から離れている間に、二人がこんなナチュラルに過激な成長を遂げていたなんて……!






(もっと実家でゆっくりしたかったけど……は、早くアパート帰ろ……。)

「姉さん、疲れたようならお背中流しましょうか。」

「体くらい洗わせろよ姉貴、念入りにヤッてやるから。」

『ってまだいたのか!!とっとと自分たちの部屋帰んなさい!!』

「そうですか、姉さんの頼みなら仕方ない。サスケ、大人しく戻るぞ……あぁそれと姉さん。いくら曇りガラスとは言っても、そんなに体を押し付けてはいろいろ中まで丸見えですよ。」

『へ……ぎゃあああ!!』

「ふう、姉貴の生尻ヤバすぎ。」

「こらサスケ、下品な表現はよせ。それに姉さんは安産型なだけだ。」

『どっちだって同じだから!!ていうか二人ともどっか行ってぇ!!』

「おい姉貴、今度はこっち向いて上半身ひっつけてみろよ。んで上体を揺らす。きっと面白いから。」

「サスケいい加減にしろ。そんなことをしたら姉さんの綺麗なB地区が、」

『いやあああもう黙れぇええ!!』






決めた、もう明日になったら即行出てく!!

ごめんねミコト母さん!!お料理もっと食べたかったけど、アタシの貞操が危ないから!!からぁ…からぁ……からぁ………―――
























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『ふう……さぁさぁやって来ましたよ我がアパートへ!』

「暑っちい、何でここエアコンねぇんだよ姉貴。」

『今壊れてて修理出してるとこなの!だからもっと実家でゆっくりしたかったのに………ってぎゃあああ!!ななな何!?再登場早すぎぃ!!』

「随分と簡素な造りですね、セキュリティはちゃんとしているんですか?こんなんでは姉さんの貞操が危ぶまれます。」

『危ぶまれてるのは確実に今なんだけどぉ!??』






着いて早々、現状の変わらなさにボストンバックをぼそりと落としたアタシ。

ていうか、これじゃあ何のために実家出たのか分からないじゃん!あぁミコト母さんの手料理がぁああ!






『つーか学校どうしたのよ二人ともぉ!!』

「何言ってんだよ、オレたち今夏休み中だぜ?」

「心配には及びませんよ姉さん。オレの大学は後半月は休みです。」

「つーか姉貴の尾行とかチョロすぎ。どんだけ警戒心ないんだよ姉貴。」

「だがサスケ、ここで一つ問題がある。議題は“この狭い空間でどちらが姉さんの隣で寝るか”だ。」

「おいおいイタチ、まさかいい歳して姉貴と寝る気かよ。ここは年下のオレに譲れって、」

「いや、もう片方は廊下で寝る羽目になりそうだからな。サスケのほうが小柄だし、まぁそのほうが現実的だろう。」

「なに最もらしいこと言ってんだよ、ただ姉貴と寝たいだけだろ?」

「当然だ。それを前提にした上での他の理由を述べたまでだからな。」

『こらこらこらこらぁ!二人ともそんな喧嘩しないで、』

「じゃあ姉さんはどうなんです?お互いと日替わりに寝ようなんてのは反則ですよ?」

『い、いやいやアタシは、』

「姉貴、オレにしとけよ。じゃないとイタチにまた変なことされるぜ?」

『いやだって待ってよ二人とも、そんなに心配してくれなくても、』






何だかまた妖しい雰囲気だが、目の前にいるのはあくまで可愛い弟たちだ。無駄な争いはしてほしくない。



だからこそ口にした一言だったが、これが大きな間違いだった。






『アタシ、もう彼氏ならいるからね?』

「…………。」

「…………。」






あ、あれれ、何かやけに静かになった気が……。

するとアタシに詰め寄っていた二人が離れ、お互いの顔を見合わせると。






―――ガシッと、その手を固く握り合わせた。






「……よし…やることは分かっているな、サスケ。」

「あぁ、オレたちの目的はただ一つ。」






あ、やばっ、何か変な波来る……!?
























ボーイズ、ビーアンビシャス

「「姉さんの彼氏を、引きずり下ろす……!!」」

(ビッグウェーブ来たぁあああ!!!)


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