7.
無事飛段さんを奪還し、再び夜空を飛行していく。
だがここに来てまだ、最後の難関ポイントが一つ存在する。
蠍「……よくもまぁノコノコと連れ帰ってくれたな、小娘。」
そう……そこにはやはり、サソリさんが家の敷居を跨がせまいと構えていた。
他の住人もこの光景をただ見守る。
鮫「ククク……さぁ、面白くなってきましたよ……!」
……いや、あいつは単なる物見客だ、野次馬だ。
飛「なぁサソリぃ〜、もう漂白剤臭くても何でもいいからよぉ。いい加減部屋で寝かしてくれよ、二日酔いしちまう。うぇっぷ、」
蠍「テメーの二日酔いなんざ知るか。勝手に血ヘド吐いて死んでろ。」
『サソリさん!そういう言い方って、』
蠍「テメーもだよ。ようやく二人まとめて厄介払いできたところを、」
『アタシの荷物、あんたがどっかやらなきゃとっくにトンズラしてたわよ!こんな家!』
蠍「んな小せぇこといつまで引きずる気だまったく……こちとら女々しくて仕方ねぇ。」
『女の子ですもん!女々しくて結構!それよりちゃんと飛段さんを迎えてあげてください!』
蠍「お断りだ。どうせそこの馬鹿には、何度言ったところで部屋の片付けなんざしやしない。どうせまたすぐ腐敗が広がる、ついでに隣室まで蝕んでな。」
『そういうことじゃなくてぇ!!』
蠍「他にどういうことがある?言ってみろこの間抜けが。」
『………っ…!』
一向に突き返してくるサソリさんに、アタシの弁論も進路変更を余儀なくされる。
……こんなこと、人前で言うの恥ずかしいけど。
―――思ってること、何一つ伝わらないなんて。
そんなの、嫌だ。
『……アタシ、昨日は嬉しかったんだ。サソリさんに迎えに来てもらえて。』
蠍「!」
『アタシのお父さんとお母さんは、どっちも考古学者で、毎日毎日、来る日も来る日も研究ばっかり……そんな二人に、アタシは邪魔なんじゃないかって……アタシなんかいないほうがいいんじゃないかって、いつも思ってた。』
蠍「…………。」
『だから、今回二人がアフリカ行くんだって聞いたときも、アタシは日本に残るんだって……そう、自分から伝えたの。』
そう切り出したアタシに、ここにいる人たちの視線が集まる。
……別に同情されたいんじゃない。
アタシが言いたいのは、もっと根本的なこと。
『家族がいて、迎えてくれる家があって。それってすごく大事なことだよ?すごく、あったかいこと……だから、……っだから飛段さんに言ってあげて。おかえりって言ってあげて。』
アタシが真にそう訴えかければ、サソリさんは一向に動かず。
だがしばらくすると舌打ちを残し、「あとは勝手にしろ」とばかりに部屋へと一人戻ってしまった。
……少しは、伝わったのだろうか。
鼬「……name、頑張ったな。」
『え、へ……?い、イタチさん!そんな頭撫で回さないでって、』
鮫「なかなか面白いものを見せてもらいました。これから更にいじり甲斐があるというものです。クククッ…!」
『ぐはっ!何か弱味握られてるし!』
泥「name〜!今日はデイちゃんと一緒に寝るの〜、うん!」
『あーはいはい、わかったからデイちゃん。』
飛「……name、さんきゅーな!」
もう酔いは冷めたんじゃないのか、しらふの飛段さんに名前で呼ばれるなんて、ちょっとくすぐたかった。
……うん、でもこれでよかったんだ。きっと。
そうして家の中へ入っていこうとすれば、アタシは途中『あ、そうだ』と振り返る。
『ところで飛段さん、あなたのヘナモンの力ってどんなのなんですか?』
だがアタシがそれを口にするや否や……この場の空気が、わかりやすいくらいどんより曇った。
鼬「……name、明日は忘れずに弁当をつくってくれ。じゃ、おやすみ。」
『え?へ?』
鮫「まったくあなたという人は……とことんトラブルを持ち込むのがお好きなようで。」
『ふぉえ……?』
泥「デイちゃんやっぱり今日は一人で寝〜よおっと!」
そう各々捨て台詞を吐き、アタシと飛段さんを残して最後はピシャリと閉ざされてしまう。
……………………
……………………
…………え?もしかしてこの質問、タブーだった?
『ちょ、ちょっと待ってよみんな!そんな置いてかないで、』
飛「そんなに言うんなら……見てくかぁ?」
『い…いや、やっぱりいいです、』
飛「遠慮すんなって、ゲハハハハァ!さぁ、神の裁きが下るぜ!」
『な、何を物騒なこと言ってるんですか……ってえぇええー!?何か体に変なガイコツ模様浮かび上がってるしぃ!!』
飛「これから神聖なる儀式を始めるぜぇ、ゲハハハハァ!邪神様ぁ!見ててくださいよぉ!!」
『い…い……、』
いぎゃああああ!!!(もー!!こんなデタラメな家、一刻も早く出てってやるんだからぁ!ぎやああああい!!)
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