暁家長編 | ナノ
6.














もー信じらんない!これからどうしたらいいのアタシ……。






鮫「いい加減腹を決めたらどうです?ここの雑用として、ボロ雑巾のように働く覚悟を。」

『それはあんたがそうしたいだけでしょうが!!』

泥「name元気だして、デイちゃんの飴あげるから。」

『そんなヨダレでベッタベタな飴いるかい!!』

鼬「何をそんなに落ち込んでいるname、この世に取り返しのつかないことなんてないぞ。」

『ってイタチさん!?帰ってたの!?』

鼬「腹が減ったんでな、土産に団子を買ってきた。もう串に一粒ずつしか残ってないが。」

『何でそう中途半端な残し方するの!?むしろ全部食べて証拠隠滅しちゃえばいいのに、何て中途半端な優しさ!!』

鼬「全種類バランスよく食べたかったんだ。」

『もう赴くままか!!』






駄目だ、唯一まともだと思ってたイタチさんもこれじゃあ……ここにアタシの頼れる宿り木は、ない……。






『ってアレ?そういえば今度は飛段さんがいないような……』

蠍「あの馬鹿ならさっき出ていった。オレの傀儡に部屋を片付けさせたら「こんな漂白臭い部屋いられるか!こんちきしょう!」っつってな。」

『まぁ血痕や腐臭はなかなか落ちませんから、漂白ハイターも致し方ない……って、まさか勝手に掃除したんですか?』

蠍「あの馬鹿からの許可が降りるわけねぇだろ。こっちは貸してやってんだ、あの部屋をどうこうしようかオレの勝手だ。」

『そんな、いくらなんでもよくないですって。飛段さんにだっていじられたくないものとか、部屋にいっぱいあったんじゃ、』

蠍「知るかそんなもん。常日頃清潔にしやがらねぇあいつが悪いんだ。」

『勝手な……せめて相手の言い分くらい、聞いてあげればいいじゃないですか!そんなんだから人の荷物だって間違えて送り返しちゃうんです!』

蠍「……何を小娘…。」

『なによ!何とか言ったらどうなのさ!』






ぎぎぎとお互いに譲らない言い合いをしていれば、突然鳴り出した電話のベル。

ここの家、まだダイヤル式の黒電話使ってるのか、時代を感じる……。






鮫「サソリさん、角都さんからお電話です。」

蠍「大家が……?何だ。」

鮫「それが、酔いつぶれた飛段を迎えに来てほしいだとか。」

蠍「くだらねぇ、放っとけ。」

『迎えに行ってあげればいいじゃないですか!』

蠍「ほざけ。誰があんな宗教バカ、」

『あーもういいですよ!わかりました、アタシが迎えに行ってきます!』

蠍「おい、勝手なことをするな。」

『勝手な人に勝手と言われる筋合いはありませんよーだ!で、角都って……この家の大家さんのところにいるの?』

鮫「はい。ここから距離は、そうですね……ざっと2km。」

『結構あるか。場所は?』

泥「nameが行くならデイちゃんも行くー!」

鮫「ではデイダラに道案内は任せましょう。」

蠍「おいテメーら、」

『じゃ行ってきまーす!』

泥「行ってくるぞ、うん!」






後ろから呼び止める声など無視し、アタシたちは夜の町へとくり出した。
























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『すごーい!デイちゃんの粘土って空も飛べるんだねー!』

泥「えっへん!オイラの術はすごいんだ!爆発だってできるんだぞ、うん!」

『ソレハ、ヤメテクレナイカナ。』






そんなこんなでたどり着いたのは、何とも年期の入ったバーの佇まい。






……え、まさか酔ってるって、普通のお店で飲んでたの?

てっきり大家さんとこで宅飲みしてるのかと思ったのに。






『ほ、ほんとにココで合ってる……?』

泥「そーだぞ、うん!」

『…で、デイちゃんは外で待っててね。』

泥「えーヤダぁ!デイちゃんも行くー!」

『チョコレートあげるから待ってなさい!』

泥「わーい、チョコだぁ!うん!」






それでもやっぱり子ども、簡単にお菓子につられてくれた。

美味しそうに板チョコを頬張るデイちゃんをそのままに、アタシはその木彫りのドアを押し開けた。






カラン……



入店ベルが鳴れば、そこはまさに大人の世界。

高そうなお酒やワイングラスが所狭しと並べられている。






角「……見ない客だな。子どもが一人、夜のバーに何の用だ。」

『ひ、飛段さんを迎えに来ました……。』

角「……ほう、貴様が……。」






初対面で、しかもお客相手に貴様って……何て口の悪いマスターだろう。

だが薄暗い店内のカウンター席には確かに、ぐったりとした人影が。






『あ、飛段さんだ。おーい飛段さん起きて〜、迎えに来ましたよ〜。』

角「気をつけろ。その馬鹿、酔うと人が変わる。」

『え?』

飛「んあ……name…?」






寝ぼけ眼で顔をもたげる、何ともだらしない酔っぱらい……って、あれ?

そういえばこの人に“ベチャポンテン”以外の名で呼ばれるのは初めてな気が………






するといきなりガバリ。

小柄なアタシには支え切れないほどの過重がのしかかる。






『え!?ちょっ、はい!?飛段さん!?ていうか重っ……!』

角「その馬鹿、酔うと非常に面倒臭くなる。」

『それってお酒飲んだら普通の症状よね!??』

飛「name〜、もっと気持ちイイことしてぇ、ゲハハァ。」

『げっ!何よ気持ちいいことって!?何よこの変態度三割増し!!』

飛「なぁname〜、ほらぁコイツで痛いことしてくれよぉ。」

『アタシにソッチの趣味のことを要求するな!!』

角「いい加減目を覚ませ。」

飛「ゲハァ!!!」






アタシに鋭利な棒を握らせようとする彼に、マスターが見事なパンチを喰らわせる……って……、






『ちょ、何コレ!?ててて手が伸びてる!?というか黒くてウネウネしたのが出てる気持ち悪っ……!』

角「……なんだ貴様、よく見れば人間か。」

『あたりまえでしょ!?逆に何と間違えるのよ!!』

角「ベチャポンテン。」

『またそれかぁ!!』






どいつもこいつも、何なのよベチャポンテンベチャポンテン!

一方吹っ飛ばされた飛段さんは、この上ないくらいのニタニタ笑い……軽く頬まで染めている。






飛「き、気持ちいい……!」

『駄目だこいつ早く何とかしないと……。』

角「オレが外へ連れ出してやる。あとは勝手に持ち帰れ。」






そうしてこの人もまたヘナモンポーズにより、さっきのウネウネにお面が付いた生き物を召喚する。

と、まるでごみ袋のような扱いで飛段さんを出口へと掃き出した。






『いやはや、すっかりお世話になりまして、ありがとうございます。ではこれにて我らは退散……』

角「待て貴様。貴様はもしやあの家の住人なのか?」

『住人?あー、そういえばアタシの荷物はなくなっちゃってるし、まぁ今の時点では一応、住んでるっちゃ住んでるっていうか……』

角「では何かオレに言うことがあるだろう。」






はて、初対面の人に他に言うことなんて……あ!

そうだ、この人確かあのヘンテコリンな屋敷の大家さんなんだ。






『あ、す、すみません!挨拶が遅れました!firstname、昨日から暁家にご厄介になってます!』

角「ふむ、そうか。サソリからは何の報告もなかったが……家賃一人分かさ増ししないとな。」






絶対それを嫌がって報告しなかったんだあの人!こりゃあ帰ったら荒れるぞぉー…!






『ま、あの……よ、よろしくお願いします大家さん!』

角「大家じゃない、ここではマスターだ。わかったらさっさと行け。」

『イエッサー、マスター!』






そう言って突き放すマスター兼大家さんに向けて、アタシは見事な敬礼を決める。

その後は再び店の看板をくぐり、カラン、とまた鈴の音を響かせて退場した。
























任務完了、

泥「おい飛段、起きろよ!キンタマ潰すぞ、うん!」

(ためらいもなく相手の急所を蹴るなんて、この子も将来サソリさんみたいになるんだろうか……。)


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