SHUT UP AND EXPLODE [1/2]
爆発、そして全て堕ちてゆく。
お前は芸術の優美さから堕ちてゆく。
SHUT UP AND EXPLODE---------------
―――アタシは暁の構成員、name。
ただいま木の葉隠れ上空を飛行中である、のだが。
「なぁ。いい加減オイラに惚れちまわないのかよ。」
『…………。』
……最近の悩みの種でもあるそれを耳にすれば、それは大きな溜め息をついた。
『……ちょっと。変なこと真顔で言ってこないでくれる?』
「会ってもう随分経つだろ、うん。いつになったらオイラのもんになるんだよ。明日か?明後日か?」
さっきから横で煩いこいつは―――まだ暁に入ったばかりの、デイダラとかいうマセガキ。
今回のような、任務などで二人っきりになるときを見計らっているらしく。
アタシはこのガキから、事あるごとに言い寄られていた。
『そういうのは理屈じゃないの……ていうかアタシ、年下には興味ないから。』
「ふーん。そんで普段メンバーの前じゃ、散々色目使って媚いてるわけか。」
『誰もそんなこと言ってないでしょ、勝手な詮索はよして。』
「けど男所帯な組織にいる女なんて、性欲相手くらいしか務まらないだろ実際。」
『……あんたそれ、小南さんに知れたらブッ飛ばされるからね。』
まったく……どこまでも女をなめ腐ったガキである。
けどこういったガキは、一度は痛い目に遭わないとわからないもの。
むしろ小南さんに殺られてしまえばいい。自爆してろバーカ。
「……何だ。ちゃんとオイラのこと心配してくれるんだな。」
『……!』
そうして、にやり。
アタシの悪意ある忠告は、何故か上手い具合に語意変換されてしまったようで。
そうして自分の良いように解釈すれば、奴は平然とアタシとの距離を詰めてくる。
『…………。』
アタシはアタシで無言のまま、体育座りの姿勢でお尻を摺るように横移動した。
が……なにぶんこの鳥、面積が無い。
「そんな逃げんなってname。オイラもそろそろ傷付くぞ、うん。」
『これが逃げずにいられるか。勝手に傷付いて頭打って死ね。』
「つーか嘘。そう突き放されるとオイラ余計に興奮する。」
『ふざけるな何なのやめろ近づくなマジあっち行け。』
「オイラを突き落としたらこの鳥制御不能になるぞ、うん。」
そうこうしていれば、遂に端のほうにまで到達してしまい。
奴の体に意地でも触れたくないアタシは、全力で顔を外部に反らす。
……下界の風景は、まだ目的地に到達しそうもなかった。
「……なぁ、name。オイラに惚れちまえよ、うん。」
『ッ…!!』
その耳を這う、生暖かい吐息。
アタシは咄嗟に両手が伸びれば、片耳を塞ぎ込んだ。
(……声だけ一丁前に変声期過ぎやがって、ムカつく………!!)
そんなアタシをおちょくるように……更には無駄に長いその金髪が。
アタシの胸元にまで垂れ、肌の表面をくすぐった。
『……っ、もういい加減にして!!アタシはねぇ、自分より強い男を旦那にするって決めてんの!!』
「ふーん……じゃあ問題ないよな、うん。」
『ッ!?何、や、めて…!』
なおさら体を寄せられれば、アタシはずるりと重心が低くなる。
そんなアタシをいいことに……奴はその両手を付け、半ばアタシを押し倒すように覆い被さってきた。
「だってオイラ、nameより強いし。」
『……は…?』
ふぁさり、
奴の金髪が仰向けた顔にまでかかれば……アタシは余計に不快感が増す。
『……あんたには本当に幻滅したわ。ていうか近い、退いて。』
「退かねぇよ、うん。現に今ある状況が、オイラに逆らえない何よりの証拠だろ?」
『強者は無闇やたらに力を誇示しないものなの。』
「ふーん……じゃあその言葉がホントかどうか、試しにオイラが遊んでやるよ。」
『……そこは“遊んでください”でしょ?仮にも目上なんだから。』
「オイラより弱い奴は目上って言わないからな、うん。」
……カチンッ、
もう頭に来た。コテンパンにしてやる。
『雷遁“封季封雷の術”!!』
「!」
アタシはもう間髪入れずに印を結び、それを放つ。
だが瞬時に相性の悪さを感じたのだろう、奴はアタシの上から飛び退き、ようやく一定の距離を置いた。
『あんたの弱点なんて、こっちは知り尽くしてる!』
「!」
『土遁は雷遁に弱い……アタシとあんたは相入れない関係なの。わかる?つまりあんたはアタシに負け、』
……が、そうしてジリッと後退りしかけたとき。
アタシが背後を気にすれば、下から吹き付ける風の湿っぽさで直感した通り。
―――そこには大きな湖が、ぽっかりと口を開けて待ち構えていた。
「何だよ、下が気になるのか?」
『!』
「オイラは場所移してやってもいいけどな、うん。」
『冗談……いいわ、このままやる。』
ビュッ!!
そうして今度はクナイを飛ばせば、奴の金髪を数本切り裂く。
それに奴が気を取られている隙に、アタシは一気に畳み掛けた。
「渇っ!」
『!』
ドォン!!
だが奴の手にした小さな粘土が、アタシの正面で爆発を起こす。
途端に煙に巻かれるも……何とか腕でガードしたアタシは、再び標的を捉えようとした。
―――だがそこには既に、奴の姿はなかった。
と、途端にぐらつく視界に、アタシはハッとしたがもう遅く。
―「オイラを突き落としたらこの鳥制御不能になるぞ、うん。」―
何もない場所で突然陰った視界に、ようやくアタシが顔を上げれば。
……奴はその足を飛行物から離し、上方に大きく飛躍していた。
(あーもう、やられた……、)
そうして主を失った飛行物は、ただの重力に従う物体と化し落下する。
アタシの背中は派手な音を立て、水上に大きく叩きつけられた。
prev | next