デイダラ長編 | ナノ
31/1.














チュンチュンと、鳥のさえずる声に目が覚めた。



アタシは敷き布団からムクリと半身を起こして、障子の隙間から差し込む朝日を見る。






(……不思議……あんなことがあったのに、アタシちゃんと生きてる……。)






いつも通りの時間に目覚めて、いつも通りの寝癖をつけて。

いつも通りに、お腹だって空いていたんだ。






「おはようnameちゃん。」

『!!!』






突然声をかけられ振り向くと、当然そこにはサイくんがいて。



昨日の浴衣が着崩れて、肩まで露わになったその姿に……アタシは昨日の夜の出来事が思い起こされビクリとする。






「昨日はよく眠れた?」

『え……は……』

「でも朝起きたときに隣にnameちゃんが居るなんて、変な感じするね。」






そう言って襟を正して布団から出ると、サイくんは障子を開けて朝日を部屋に取り込んでいる。

まるで何事もなかったかのようにいつも通りなサイくんに、アタシは自分の記憶を疑った。






………夢、だったのかな。

でもあんな自分でも考えられないようなこと、夢になっちゃうものなのかな。






「体痛くない?」

『あ、うん……昨日はあっちこっちいっぱい歩いたから、ちょっと足が筋肉痛かも……』

「そっちじゃなくて、あっちの話。」

『へ……?』






アタシがその意味を分かりかねていると、サイくんはスタスタとアタシに歩み寄る。

スッとその身をしゃがませると、アタシは途端にビクリとした。






……サイくんのその手が、アタシの着崩れた浴衣から覗く太ももの内側に触れている。






「ココ、いっぱい使ったでしょ…?」

『……!!!』

「ごめんね無理させて。でも思ってたよりずっと可愛い反応するから止まんなくて。」






……やっぱり、夢じゃないんだ。

その場所が痛みを思い出したみたいに、次第とジンジンし始めた気がした。






「せっかくだからシャワー入る?」

『!!いや、いい……!アタシ帰るっ、』

「そんな格好で?」






たまらなくなって立ち上がるアタシだったけど、彼の言う通り。

おかげでズルリと落ちそうになる浴衣を、アタシは慌てて掴み上げた。






「ね、シャワー入ろう?それの着付け方だって分かんないんじゃないの?」

『…………。』

「ちゃんとシャワー浴びて綺麗になったら、僕がやってあげるよ。」






ニコリとしたサイくんに正論を言われれば、それ以外の方法が思い浮かばなくて。

仕方なしに、アタシはここのお風呂場へと案内されていた。






少し広めの脱衣所に着くと、棒立ちのアタシに彼はどんどん説明してくれる。







「ボディソープ一式はそこの籠にあるのと、ドライヤーはここの引き出しで……この家に女の子いないからよく分からないけど、必要そうなものは大体あるはずだから探してみて。はいタオル。」

『は、はい……』

「それと上がったらとりあえずコレ羽織ってきて。分からないことがあったら呼んでね、ドアの向こうで待ってるから。」

『あ、ありがとう……サイくんは入んなくていいの…?』

「……それ誘ってるの?」

『!!え、いや、』

「さすがに昨日の今日で刺激が強すぎるから、また今度にするよ。」






そう言って素直に脱衣所を出ていくサイくんに、アタシは心底ホッとする。






そうして少しの仕草だけで脱げてしまった浴衣を置きざりに。

これまた広めの洗い場で、アタシはしばらくシャワーの雨に打たれていた。






(……アタシ、本当に知らなかった。自分があんなになっちゃうなんて……。)






もちろんサイくん自身の豹変ぶりにも驚いたけど。

何よりいままでの自分になかった、しかもあんな人間じゃないみたいな感情に出会えたことが信じられなかった。






(あんなこと、みんながみんなしてるのかな……。)






もはや何を話したのかも思い出せない。

ただお互いの熱と、汗と、息づかいと……体の底から湧き出るような、ゾクゾクとした感情しか。






ー「初めての感情ってね、それがプラスだろうがマイナスだろうが凄くゾクゾクするんだ。」ー






それが彼の言うプラスなのかマイナスなのか、どっちの感情かは分からなかったけど。






そうしてアタシは、先程彼に指摘されたところに恐る恐る手を伸ばす。

チクリ、とした痛みは怪我をしたのでも、筋肉痛のそれとも言い難い……何より心に、ジクリとした罪悪感のようなものすら芽生えていた。
























『……っデイダラぁ……うぅ…あぁ…!!』






アタシはシャワーの音に紛れて、声をしゃくり上げて泣いていた。






どうしてこんなに胸が苦しいんだろう。

どうしてこんなに、幼馴染みのことを考えてしまうんだろう。






ー『チューしちゃって、アタシのはじめて……他の人とチューしちゃったら、あたしデイダラと結婚できなくなっちゃうよぉ、うわぁああん……!!』ー






いつかにアタシが、そう言って泣きついたことがあったけど。






ー「じゃあ大丈夫だろ。そんなんでガキはつくれねぇし、結婚どうこうには関係ねぇからよ、うん。」ー






キスは大丈夫だって言ってた。関係ないって、問題ないんだって。






ーーーじゃあきっと、これがそうだったんだ。






ー『じゃあ結婚って、何なの……?何をしたら結婚になるの…!?』ー

ー「肉体関係には及んでるだろうね、当然。」ー






以前サイくんにそう言われたこともそうだけど。

たとえ誰に言われなくとも、アタシの本能がそれを告げていた。






それだけの行為を、アタシはしてしまったんだ。


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