レベル不足です ちょっぴりこちらの続き。 「へ、へーいか、彼女! お、俺と遊びませんか!!!!!」 唐突にそう言って身を乗り出してきたシグレに、黒江は無言でデコピンした。 「あだっ!」 「・・何? 要件を五文字以内で簡潔に話して、目の前から消えて」 「え、ええぇえぇ・・ご、ごめんってば」 シグレはあわあわと手を合わせて謝る。最初から謝るくらいならやらなければいいのに、と黒江はそのちんちくりんな頭を睨む。 「・・・・で、どうせあのちゃらんぽらんにそそのかされたんでしょ」 あいつ、と黒江の所属する隊の隊長である加古の前に座る男を指さす。 シグレは元来異性が苦手で、黒江以外の異性の前では共同不審になるほど。そんなシグレからデートの誘い文句が出るとも思えないし、どうせあの馬鹿な男から余計な事を吹き込まれたに決まっていた。よし、後で覚えてろよ。 シグレもよく言えば真面目、悪く言えば単純なので、きっとそんな馬鹿の言葉を鵜呑みにしたのだろう。 事実、今だって伺う様にこわごわと黒江を見つめている。 「ふ、双葉、」 「・・・・何?」 「お、怒って・・る?」 「・・・・・・別に」 「う、うう・・怒ってるじゃんか」 「しっかりしなさいよ。あんた、男でしょ」 「う、うん・・あ、で、でね、本題なんだけどーー」 「五文字以内で」 「うっ・・! え、えーと、待って待って」 いち、にー、さん、しー、と指折り数えるシグレにおかしくなって黒江は笑う。 からかわれても、冗談を言われても真摯に受け止めるシグレを煙たがる連中がいるが、黒江は嫌いではなかった。 いつだってうんうん、それで? とまっすぐ此方を見て話を聞いてくれる瞳は嫌いじゃないーーいつからだったか、その瞳から目が離せなくなったのは。 「遊びに行こ! よし、五文字!」 「遊びに? どこに?」 「ほら、和菓子屋。双葉、気になるっていってたろ」 ほら、この前少し話しただけの事を覚えててくれた。 黒江は飲みかけのグラスから手を離した。 「いいよ、行こう。いつ?」 「本当! じゃあ、今週の日曜!」 「日曜ね」 携帯で予定がないことを確認してから相槌を打つと、予定を書き込んでいく。なんだか、これはまるでーーそこまで考えて、急に恥ずかしくなって黒江は小さく頭を振る。 「よーし、そうと決めれば駿とかにも確認しなきゃね!」 「・・・・は?」 まさか出て来るとは思わなかった一言に慌ててシグレの顔を見つめる。しかし、帰って来たのは無邪気な笑顔で。 「・・え? みんなにも声をかけようよ、みんなで行った方が楽しいし・・・・って双葉?」 急にがたり、と席を立つ黒江にシグレは慌ててついていく。 「どうしたの?」 「・・・・なんでもない」 「え、えぇ〜?」 怒らせたのかと思いきや、不意に振り向いた黒江は笑っていた。ちょっと呆れたような、そんな笑みだった。 「日曜日、楽しみにしてるから」 まだ、なにも知らないシグレはその笑顔がただ嬉しくてうん、と笑い返すのだ。 |