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「この変態エリート! 破廉恥!」
「うわぁ、なんで朝イチにおれは罵倒されなくちゃいけないの」
宇佐美から一通り説明を受けている最中、突然現れた少女がそう罵倒しながら迅の胸倉を掴んでゆさゆさ揺さぶった。三人はあっけにとられてその光景を見守る。
「ずるいずるい、あたしだってキリの面倒見たいんだから!」
「あー、そこなのー?」
ぎゃあぎゃあ少女がわめいていると、今度は男がふたり現れる。何故か、大きい方はキリを小脇に抱えている。
「なんだなんだ、騒がしいな小南」
「いつもどおりじゃないすか?」
そう言って、黒髪の方が三人に気付く。
「おっ。この三人、迅さんが言ってた新人すか?」
「とり、ゆーまとおさむとちかだよ」
「へー、キリがもう懐いたんだ」
「新人・・?」
そう言って、小南は迅の胸倉を話すと今度は睨みつけた。
「あたしそんな話聞いてないわよ!? なんでウチに新人なんてくるわけ? 迅!」
それがな、と迅は三人の後ろに回るとこう言い放った。
「この三人、じつはおれの弟と妹なんだ」
「えっ、そうなの!?」
そう言って小南は空閑をまじまじと見つめる。
「・・言われてみれば・・似てる・・かも・・とりまる、あんた知ってた?」
「ええ、そうりゃもう。むしろ小南先輩は知らなかったんすか」
わたわたする小南は木崎にも振り返る。
「レイジさんも知ってたの!?」
「あぁ、よく知ってるよ。迅が一人っ子だということを」
その一言に、完全に混乱した小南は何度も三人と迅を見比べる。助け舟を出すように、宇佐美が三人に紹介する。
「このすぐダマされちゃう子が小南桐絵十七歳」
「だましたの!? こんの変態エリート!」
「うわそれやめて」
そして、と宇佐美は黒髪の少年に手を向ける。
「こっちのもさもさした男前が烏丸京介十六歳」
「どーも、もさもさした男前です」
そして宇佐美は最後にキリを抱える男に手を向けた。
「キリちゃんを抱えてる落ち着いた筋肉が、木崎レイジ二十一歳」
「落ち着いた筋肉・・? それ人間か?」
そう言うとキリを地面に下ろす。
キリは迅の隣に座ろうとしたが、小南にぐっと引き寄せられて小南の隣に座る。一瞬きょとん、としたのちにそれでもいいのかにこにこ笑った。
「それで本題にはいるけど、レイジさんたち三人にはこの三人の師匠になってもらってマンツーマンで指導してもらう」
「はぁ? なんで? 絶対いや」
つん、とそっぽをむいた小南に迅はそうそう、と付け足した。
「これはボスの命令でもある」
「ボスの・・?」
その一言に、木崎と烏丸はそれなら仕方ないと態度を変える。苦い顔をしていた小南は突然空閑を指さした。
「だったらあたしはコイツね。見た感じあんたが一番強いんでしょ? あたし、弱いやつはキライなの」
そう言われた空閑はにやっとした。
「お目が高い」
それなら、と宇佐美は木崎を指さす。
「千佳ちゃんはレイジさんだね、。この中で唯一スナイパー経験あるのがレイジさんだから」
そうなると・・と烏丸は残った三雲を見つめた。
「よ、よろしくお願いします」
何もわかってないキリは、手をあげて首をかしげた。
「キリはー?」
「よーし、じゃあキリはおれと・・」
と言いかけた迅の言葉にかぶせるように小南はキリを撫でるといった。
「キリは栞とよ、栞と」
「うん、栞ちゃんとー」
「あぁもう可愛いなぁぁぁ!」
そう言って笑ったキリに宇佐美が飛びつく。その光景を見て、三雲は思わず思った。
大丈夫か、ここは。
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