01
「西条キリです、お世話になる気なんて微塵もありませんので早く帰してください」
「・・・・・・」
彼女を引き取ったその次の日、さっそく彼女を連れて上層部の会議室へと行く。
重苦しい部屋の雰囲気と城戸の視線に物怖じすることなく、西条キリはそう言い放った。
さすがに城戸相手にこの言い方はまずい。西条キリを軽く睨むも、当の本人は視線に気付いているのかいないのか、そっぽをむいたままムスっと立っていた。
「・・唐沢さん、これはどういう意味か説明はあるのでしょうな?」
ほら見ろ、とトゲを含む鬼怒田の問いかけを聞きつつ、再び西条キリを睨む。ーー相変わらず無視だが。
「昨日資金提供に応じた人物の要求でしてね。応じる代わりにこの子の身柄をボーダーで預かってくれと」
「はぁ!? そんな条件をホイホイのんできたのかね!」
「・・うっさいわねぇ、私はもう帰るって言ってるでしょオジサン」
「オジ・・!」
みるみる真っ赤になっていく鬼怒田を西条キリは鼻で笑う。隣の根付も気に食わんと言わんばかりに彼女を見、忍田は如何したものかと困ったように見ていた。城戸はしげしげと西条キリを見たのち、瞳を閉じる。
「私だって一つ返事でこの条件をのんだわけじゃーー」
「だーかーら、お父さんがなんて言ったか知らないけれどーー」
「君は黙っていてくれ」
少し大きな声でそう言えば、西条キリは唐沢をチラと見、それきり黙り込む。
「条件がかなり良かったんですよ、資金だって開発面のものも承諾していただいたんですよ。この条件をのまなければ援助はなし、資金は打ち切りです」
資金は打ち切りの部分を誇張すればこの言葉に鬼怒田はむぅ・・と黙り込む。とりあえず、鬼怒田は丸め込めそうだ。ここで、一連の流れを困ったように見ていた忍田が切り出す。
「ただ・・その子はボーダーの誰が一緒に過ごすんですか? ここは、全体的に男性の方が多い」
「それなら、唐沢さんが見ればいいじゃないですか」
「・・は?」
「言いだしっぺの原理ですよ、ねぇ? 城戸さん」
根付の言葉に忍田が制止する。
「でも、彼女はーー」
「もういいです!」
忍田の声を遮ったのは西条キリの声だった。
「私が邪魔だってことは充分分かりました! 帰るとそちらに害があるようなのでこの建物のどっかで勝手に暮らします!」
「そんな無茶なーーおい!」
唐沢の制止も虚しく、西条キリはばっと嵐の様に部屋を飛び出していってしまった。
「・・唐沢くん、断ってきてくれ。一人の少女に振り回されている時間などボーダーにはない」
(あー・・あのガキ・・)
柄にもなく、口悪い悪態を心で呟く。めんどくさいことになったと頭を掻いて立ち上がった。
「・・ちょっと失礼します」
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