これの続き








「あー、こらこら。ダーメ」


咄嗟に繋がった身体を二つに戻そうと二人は考えた。しかしそれは叶わない。近付いて正面まで来たレンが、浮いた春歌の肩を押して下へと戻す。必然的に、離れかけた二つの身体はまた深いところで繋がる結果を生み、最奥への刺激に膣は収縮して、中に留まる雄を締め付けた。
後ろから春歌を抱き締めたまま、華奢な肩越しにギロリと鋭い眼光が光る。その眼が捕らえるのは。目の前で楽しそうに微笑む男。視線を浴びれどもレンは凄む事もなく、息を漏らして笑った。


「ちょっとイッチー、そんなに睨むなよ。ボスからの書類、届けるって連絡しただろう?」


連絡とは何の事であろうか。ふと気付けば、いつも手近に置いてある携帯が見当たらない。気付かない内に着信があったのだろう。それよりもインターホンの音に気付かなかった事に驚愕するし、加えて返事もないというのに勝手に、平然と上がり込んできたレンにも驚くと共に、程々呆れる。

そして、何より。

自分は兎も角彼女の霰もない姿を晒してしまった事に怒りが沸き上がる。


「…解りましたから、取り敢えず出ていってくれますか」


いつもより大分低音の声が咽から溢れた。


「どうして?」


明らかに不快そうなトキヤとは反対の表情で軽快に、訊いた。


「別に交ざったって構わないだろう?だって、」


――イッチーとレディは、付き合ってる訳じゃないんだから。


どくん。トキヤの心臓が嫌な音を立てた。忘れたい過去が、何処かにしまい込んでいた過去が、ずるずると引き摺り出される。
レンの言う通りだ。二人は恋人関係ではない。初めは、半ば無理矢理。無理矢理といっても乱暴に扱った訳では決してない。何時間もかけて快楽を植え付け、それなしではいられなくなるように、した。
身体だけでもいいと思った。だが、今は、心を欲して止まない。はじまりがおかしかった所為で、今更口に出来ずにいる。
トキヤの奥歯が軋んだ。一方のレンは愉快そうに口角を上げて、手を伸ばす。すっかり俯いてしまった春歌の顎を捕まえて顔を上げさせて、


「ん、んん……っあ!」

「!……、っ」


キスを、した。ぷっくりした下唇を優しく食んでから肉厚の舌で歯列を割り、硬口蓋を擽る。出し抜けな咥内への刺激に春歌は身を捩じらせたが、それが新たな刺激を生む結果となった。中に収まったままのトキヤの屹立した熱が図らずも一番奥を抉ったのだ。待ち望んでいたとも言える刺激に身体は正直で、意識せずとも膣内が締まる。トキヤが息を詰めるのを背中越しに感じた。彼からしてみても待っていた快楽であるからして、血液が一気に下半身を廻り、熱量が増す。


「っ、は…。腰、動いてるね。気持ちいい?」

「ん…ふ、あ…きもちい…れす…」


潤んだ瞳の中のレンが笑った。


「へえ……随分可愛く育ててもらったんだね。妬けるな」


柔らかな髪を骨張った手で撫でながら顔を寄せる。ちゅ、と優しいキスをしてからまた深く貪った。
いつまでそうしていたか。次の行動を起こしたのもやはりレンであった。


「ん!んんーっ!」


春歌が一際大きく声を上げた。静かに下へと伸びたレンの右手中指がスカートの上から、布越しに陰核を擦ったのだ。先程の比でない程春歌の細腰が揺れる。レンから与えられる刺激から逃げたい。しかしその先に見える覚えのある快楽の世界へ早急に導いて欲しいという相反する思いもある。自分自身の事だというのにどちらを望んでいるのか判らなくなってしまっていたが、その答えが後者だと導いたのは、先程から春歌の耳元で短く息を吐いていたトキヤだった。
ソファーのスプリングがこれまで聞いた事のない音を立てていた。ぎしり。派手に鳴ったその音と同時に再び最奥が抉られる。今度は、トキヤによって。遂に痺れを切らしたトキヤが春歌の腰を掴まえて上下に揺らし、それに合わせるように下から突き上げたのだ。


「あっ!あっ、や…ぅ…ああーっ!」


春歌の華奢な背が反り返る。二人からの刺激であっけなく達し、その余韻に身体中が痙攣を起こしてる中、身体の一番奥でトキヤの熱が弾けたのを感じた。


「ふふ……可愛いね、レディは。それから、」


――すごく色っぽい。

赤く染まる耳元で吐息に混ぜてそう囁く。
いつものふわふわとした砂糖菓子のような雰囲気からはかけ離れていると、レンは思った。キスの合間に漏れる声も、淫らな腰つきも、達する時の表情も。身体の奥からぞくぞくと何かが込み上げるような艶やかさに何度咽が鳴ったことか。
くたりと上半身を垂れた春歌の両脇を下から掬うようにして持ち上げる。少々の水音が聞こえたが、それは結合部が離れた音だと気付くには容易い。そのまま宙ぶらりになった小さな身体を横抱きにして、再び顔を寄せた。今度は、頬に。慈しみを伝えるように。


「……何処に連れて行くつもりですか」

「んー?ちょっと此処じゃ狭いかなと思ってね。ベッドルーム、どっちだっけ?」


返答を聞かずに歩き出したレンを止める術は、どうにも見当たらなかった。






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