ぼくの宝物


───パキッ

「ニ゛ャ!」

何かが割れる甲高い音と、腕への感覚に足を止める。その時にはもう遅く、パラパラと散らばっていく色とりどりの粒。船の木製の床に跳ね転げていくパワーストーンを慌てて拾う。木目の間に挟まったりと拾うのに一苦労だ。

「あれ、大丈夫ー?ファウスト」

廊下の先に転がっていった最後の一粒は、ちょうど真正面から来たナーシャに拾い上げられた。しげしげと眺めてからはいどーぞ、とぼくの手中に納まった。

「どうしたの、ソレ」
「ブレスレット。割れちったんだ……」

掌の中に集って乱反射するパワーストーン。その中の一粒が見事に真っ二つに砕けてしまっていた。まぁ自分も海賊業、潮風にやられて劣化は早かろうとは思っていたけど、やはり残念な気持ちは拭えない。何故ならこのブレスレットは他ならぬ、ホーキンス船長が選んでくれたものだったからだ。ぼくが乗船を決めた時に船長がくれた、ぼくにとっての宝物だ。

「……ね、ちょっとソレ貸して」

ふと色とりどりの石を拾い上げているぼくの両手を包み込むナーシャの手。見上げると彼女はにっこりと口角を吊り上げていた。

「んー……あ、やっぱり。これならいけるかも!」

ゆらり、彼女の片手がぼくの両手の上を揺らぐように薙いだ。すると、割れてしまった石がプルプルと手中で小刻みに震えだしふわりと浮いた。ちょっと吃驚して毛が逆立ってしまった。宙に浮かんだ石はまるで時を遡るかのように重なり合って、元の形に。

「ニャ……ニャ……!」
「水晶っぽかったからお役に立てるかなと思って。どう?」
「すごいニャ!元通りだ!」

ぼくが興奮気味に声を上げると、彼女は照れくさそうにはにかんだ。
折角だしあたしが直してあげるよ。とテグスを探しに行った彼女の背を見送りながら、いい仲間を得たなあ、と思った。

そして、元通りになったブレスレットを眺めて再び思う。船長と、ナーシャの力の籠ったブレスレットだ。ぼくの宝物だ。
いい仲間を、得たなあ。




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