きみ色に染まる(1/3)
初夏の風が吹き抜けるそこは予想以上に明るくて
直射日光から遮断された室内の明るさに慣れきっていた俺は、その眩しさに目を細めた
「うわ、今日ってこんなに天気良かったんだ」
雲一つない、真っ青な空を見上げて伸びをする俺の背後でみのりちゃんが笑う
「夏輝さんてば‥‥」
「可愛い、とか言うのはナシだからね?」
振り返って先手を打った俺に対して、みのりちゃんはキョトンとした顔で目を瞬かせる
「ダメなんですか?」
「‥‥そうしてくれると凄くありがたいな」
生真面目な口調で言って、みのりちゃんの顔を覗き込む
「「‥‥‥‥」」
そのまま数秒間見つめ合った後、俺達は二人同時に吹き出した
間近に迫ったライブに向けて、JADEが練習に励んでいるスタジオ
いつもは男ばかり4人しかいないそのスタジオに、今日はみのりちゃんがオフを利用して昼食を差し入れに来てくれている
メンバー達と賑やかにそれを平らげた後、俺とみのりちゃんは二人で屋上に上がった
5月の爽やかな風に、みのりちゃんの髪がさらさらとなびく
そのすぐ隣で柵に寄り掛かった俺は、ふと違和感を感じて首をかしげた
(あれ? 今、何か‥‥)
思うと同時に、みのりちゃんの方に腕を伸ばす
「みのりちゃん、ちょっといい?」
「え? 夏輝さん!?」
突然首筋に触れた俺の指先に、驚いたみのりちゃんがビクッと反応した
けれど好奇心の方が勝っていた俺は、そのままみのりちゃんの首筋に指を滑らせる
柔らかな髪をそっと掻きあげると、みのりちゃんの耳にこの前会った時には確かになかったはずの、真新しいピアスが嵌まっていた
「あ、やっぱり」
「‥‥‥‥っ」
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